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まじめ人間ほどストレスのはけ口、趣味を楽しむ余裕を |
「甘い物を見ると、つい手が出る」「時々、無性に甘い物が食べたくなる」。甘党と呼ばれる人なら、だれでもこんな経験があるだろう。しかし、人目を盗んでドカ食いするようになったら要注意。
ストレスによる心の病気かもしれない。仕事人間で家庭でもくつろげない中年サラリーマンに、そんな"甘味依存症候群"がじわじわと広がっているそうだ。「食事療法や投薬をしているのに、血糖値は下がるどころか悪化している。おかしいな」。商社課長のA氏(45)を診察した職場の産業医はこういって首をかしげた。A氏は一年前、健康診断で糖尿病や肥満傾向を指摘され、内科治療を受け続けていた。
週末にド力食い
開業医にすすめられ、精神科医を訪れたA氏は、自分の生活についてポツリポツリと語り出した。もともと、まじめで責任感の強いA氏は、同期社員より早く課長に抜てきされるなど、将来を有望視されていた。しかし、不況期に入り会社の業績は悪化。他社との激しい競争、人員整理や合理化といった環境下、律義な性格のA氏のストレスは増していった。
しかしスポーツや囲碁などストレスを発散できるような趣味を昔から持っていない。家庭に憩いの場を求めても、妻や子供たちに仕事人間の父親を迎え入れる雰囲気はなかった。酒が飲めないA氏は、ついに「やけ食い」でストレスを解消するにいたった。特に週末は、家族に隠れて好きなシュークリームやようかんを買っては一箱、一本を→気に食べてしまうことを繰り返していたという。
「週末にドカ食いして平日のうっぷんを晴らす『週末過食症』が、仕事人間の中年サラリーマンに増えている。中でも甘いものばかりを食べるケースが目立つ」。若い女性には「ダイエット指向の影響か、過食はあっても甘味依存のケースは少ないという。
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飲酒が苦手な人注意
甘味依存症候群に陥る人の共通点は、真面目で几帳面な性格、アルコールが苦手なこと。「糖分は体に悪い」と理屈ではわかっており、職場など人前では甘いものを食べない。しかし週末、家族が出掛けてしまい家に一人になると、多量の菓子や砂糖の塊をむさぼり、清涼飲料のがぶ飲みを始める。完ぺき主義が災いし、目の前にある甘い物をすべて食べないと気が済まない。「場合によっては、アルコール依存症よりも始末が悪い」。アルコールならば、一定量を超すと酔っ払ったり、眠ってしまったりして自然にストップがかかる。
周囲の人も異常に気付きやすい。しかし、甘い物はいくら食べてもすぐには異常が現れないので、歯止めがかかりにくい。症状が軽い場合には、人工甘味料を使いながら徐々に糖分の摂取を抑えていくこともできる。しかし心の病と認められた場合は、カウンセリングを中心とした治療が必要になる。A氏は医師の勧めで子供のころ好きだった釣りを再開し、会社の同好会に入るなど「仕事と甘味」以外に打ち込めるものを作った。週末に家族と一緒に食事をとり始めたことも、症状の改善に効果があったという。
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うつ病のおそれも
なぜ甘い物に依存してしまうのか、そのメカニズムはまだわかっていない。日本肥満学会会長はこう語る。「食欲を調節するのは大脳にある視床下部の満腹中枢と摂食中枢で、満腹感を起こすもとになるのはブドウ糖。
ストレスがたまると脳内にいろいろなものが分泌され、満腹中枢のブドウ糖に対する感受性が弱まる。結果的に満腹を感じるためのブドウ糖必要量が増え、ほかの食物よりもブドウ糖に分解されやすい甘い物をより多く求めるーという考え方もあるが、まだ仮説の段階だ」。
甘味そのものに精神安定作用はないという。「むしろ、糖分をとり過ぎるとうつ状態を引き起こすおそれが大きい」と。症状に気付いたら、隠さずに早めに医師に相談することが大切だ。「世の中が不景気ということもあり、こうしたストレス病について身に覚えのある人は増えているはず」と警告する。
(日本経済新聞) |
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