日本中医学院卒業 北京・広州中医学院留学 日本自然療法学会会員 日本薬膳振興協会会員 八面蒙色研究会講師
清水寺管長、松本大圓氏揮毫 薬食同源。健康の維持には食生活が大事と説いています。
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こころの病い

 こころの変化が原因で起こる症状というと、イライラ、ゆううつ感、不安感など、精神的なものを考えがちです。しかし、息苦しくなったり、胃腸の調子がおかしくなるというように、肉体的な症状をともなうこともあります。治療は気長にユックリ致しましょう。漢方治療は体に優しく長期の服用も安心です。

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こころとからだ、中医学の考え方

◇五臓のネットワークがこころとからだの健康を支える
◇本能と理性のバランスによってこころの活動が行われる
◇感情を表現することによって臓腑の生理機能が正常に戻る
◇原因が取り除かれても臓腑の機能失調が残る

こころの病の診断と治療

◇こころの病は三つに大別される
◇やり場のない怒りが内臓の機能を失調させる
◇機能の失調が長引くとほかの臓器にも影響がおよぶ ◇病態の変化に応じて治療法が変わる
◇考えすぎが内臓の機能を失調させる ◇心の活動エネルギーが不足している場合
◇基本物質の不足が臓腑の機能を低下させ不安感が慢性化する ◇心の栄養が不足している場合
◇不安感・恐怖感の診断と治療 ◇心の陰液が不足している場合
◇現代医学の考え
◇相談フォーム

五臓のネットワークがこころとからだの健康を支える

 中医学では、こころとからだは一体のものであり、こころに異常が起こると、必ずからだに影響がおよび、からだに異常が起こると、必ずこころに影響がおよぶと考えます。

 「心」「肝」「脾」「肺」「腎」の五臓は、異なる働きをもち、連係し、制約し、助けあいながら、生きるために必要な基本物質である「気」や「血」「津液」「精」をつくり、全身に送っています。ですから、五臓が正常に機能することが、こころや体が健康に活動するための前提となります。

本能と理性のバランスによってこころの活動が行われる

 中医学では、こころや体の活動を「神心(シンシン)」といいます。神は、表情や動作、態度や言葉として表現されます。神には「魄(ハク)」と「魂(コン)」という二つの面があります。魄(ハク)は生まれつきもっている本能で、生まれつきの性格です。魂(コン)は教育や学習、経験によって身につける理性です。魄(ハク)と魂(コン)は互いに依存し、制約しあいながら、バランスを保っています。

 神は、五臓のうち「心」に内蔵されています。社会現象や気候、対人関係、家庭環境などの刺激が「心」に伝達すると、魂(コン)が分析と判断を行い、魄(ハク)から情志を選んで記憶、思考、処理、行動を行います。同時に、対応する五臓の働きを環境に順応させます。また、五臓の機能の異常も心神の異常な反応を起こします。



感情を表現することによって臓腑の生理機能が正常に戻る

 感情には「喜」「怒」「憂」「思」「悲」「恐」「驚」の七つがあります。これを「七情」といいますが、このうち、心と喜、肝と怒、肺と憂、脾と思、腎と恐のように、特に五臓と関係の深いものを「五志」といいます。

 情志の変化につれて生理機能が変化すると、顔の紅潮や蒼白、手の指の震えや弛緩、食欲亢進や低下などの反応が現れます。しかし、刺激の程度が軽く、全身の機能が正常なら、情志を表現することによって、刺激が解消され、生理機能は正常に戻ります。

原因が取り除かれても臓腑の機能失調が残る

 しかし、刺激が強すぎたり、刺激を受ける時間が長すぎると、臓腑の協調とバランスがくずれます(実証)。この状態が続き、気や血、津液や精をつくって全身に送る働きが低下するようになると、(虚実挟雑証)あるいは(虚証)心の気や血、陰液が損なわれ、心神の異常によるさまざまな症状が現れます。人体の陰陽のバランスが限界を超えて変化するので、陰陽の失調を正常に戻せなくなります。こころの病いは、こうして始まります。

 いいかえると、実証は臓腑機能の乱れやうっ滞が主で(鬱証)に相当し、まだ基本物質の損傷がないか少ないものをさします。これに対して虚証の多くは、すでに五臓の機能失調が基本物質を損なっている状態です。そのうち、鬱証がいっそう進んで起こったものには(実証)が残っており、(虚実挟雑)もみられることになります。

こころの病は三つに大別される

 こころの病いは、まず心の機能失調をひき起こし、不安や不眠、動悸や健忘、心配しすぎ、夢をよく見るといった症状を現します。しかし、心は五臓の中心で、心が傷つけば、ほかの臓にも影響がおよびます。したがって、こころの病気としてではなく、高血圧症や咽喉神経症、うっ血性疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、膀胱神経症など、臓腑機能の滞りや乱れとして現れることが多いのです。中でも肝と脾の機能低下です。そして病気が長引くと、必ず腎に波及します。

 こころの病は、三つのタイプに大別される。
@怒りの鬱積によって肝の機能が滞って起こる
A思い悩みすぎて脾の機能が失調したり、肝と脾の調和がくずれて起こる
Bもともと虚弱で、心の活動に必要な気や血、津液などの栄養が不足して起こる

 心失所養は、鬱怒傷肝や思鬱傷脾が進行して、臓腑の陰陽のバランスが失調するだけではなく、気や血をすり減らして虚をひき起こしたり、もともと虚弱で気血の産生が低い人が心配ごとや悲しみ、恐怖や驚きといった、陰性の刺激を心に受けて起こります。

やり場のない怒りが内臓の機能を失調させる

 鬱結や怒りによって起こる、こころの病いについて考えてみましょう。心因性の症状は、必ず心を中心に起こります。

 怒は肝の機能を失調させます。たとえば、心配ごとがあり、不快感や不満を解消できず、怒りをぶつけるところがないために、悶々とした状態が続いたり、激しい怒りを覚えると、肝の機能が失われます。肝は、全身の機能が順調に働くように、気や血、津液の流れを調節するとともに、精神情緒の調節を行っています。血流量を調節して、筋や腱をしなやかにし、脾の消化・吸収機能を調節することなども、肝の疏泄といいます。

※疎泄:流れや通りをよくするという意味です。

機能の失調が長引くとほかの臓器にも影響がおよぶ

 鬱怒傷肝タイプのこころの病いは、肝の疏泄機能が失調した気鬱からはじまります。これが続くと気が滞り(気滞)、血や津液の流れも滞って、痛みや脹満が現れます(血鬱)(痰鬱)。

 また、気滞が進むと、肝の機能が異常に亢進して、気が本来とは違う方向に働くようになります。(気逆)。

 気逆のうち、からだの上のほうに行く上逆では頭や顔の症状が起こり、熱を帯びると症状が激しくなります。また、脾胃をおかす横逆では胃腸症状が起こります。さらに慢性化すると、血や精を消耗して心や腎を障害するようになります。

 肝の疏泄機能が長い間滞ったり、激しい怒りにあうと、気が火(熱)となって、体の上部に昇ります。(火鬱)。この火は血や津液、精を消耗するため、やがては肝腎陰虚の状態になります。

病態の変化に応じて治療法が変わる

 肝の疏泄機能が失調する気鬱の症状では、憂鬱で気分が不安定となり、怒りっぽくなります。そのほか、胸がつまったようになる、胸や脇が脹る、胃が重く、ゲップが出て食欲がない、大便がすっきり出ない、舌苔がベタッとして薄い、脈がピンと張ったようになるといった症状が現れます。

 気鬱の症状に加え、頭痛や不眠、胸や脇の脹り、刺すような固定痛、からだの部分的な冷え、あるいは熱感、舌が紫色になったり、お点やお斑が現れるといった血鬱の症状には「駆お血剤」を使います。

 また、喉に何かがつまったような感じがして、呑み込んでも吐いても異物感が取れない症状は「梅核気」といい痰鬱に相当しますが、この場合「降気化痰法」を用い、状態と五蔵の関係で使う処方は変わってきます。

考えすぎが内臓の機能を失調させる

 ものごとを考えることは、からだの正常な活動です。しかし、困難な問題をいつまでも解決できなかったり、心配ごとや悲しいことを考えたり、長い間単調な作業を強いられると、脾の機能が失調します。
 
 また、脾の機能を調節する肝の疏泄機能が失調した場合にも、脾の機能が失われます。脾の機能が失調すると、栄養分を肺に送る脾の昇清作用と、不要なものを大腸に送る胃の降濁作用が乱れます(昇降失調)。そのため、悪心や嘔吐、下痢、胃の脹満感、食欲不振、胸の脇の脹り、ゲップ、酸っぱい水がこみあげてくる、といった症状が起こります。

基本物質の不足が臓腑の機能を低下させ不安感が慢性化する

 脾の機能失調が長引いて働きが低下すると、心と脾の活動に必要な気や血が慢性的に不足(虚)した状態になります。(心脾両虚)

 心や脾の機能が低下している状況では、食欲不振や疲労感、不眠、動悸、健忘、驚きやすいといった症状が現れます。そのうえ、希望や願いがかなえられなかったり、家庭問題、仕事上の不満、心配ごと、精神的な緊張状態が続く、ささいなことでくよくよ思い悩むといった状態が続くと、憂愁や悲哀、恐れや驚きといった陰性の情志が、心神を傷つけやすくなります。

@心気虚
A心血虚
B心陰虚という、三つの病態が起こりやすくなります。

心の活動エネルギーが不足している場合

 普段から元気のない人が、ささいなことでクヨクヨしたり、悲しんだりすると、特に脾の機能が乱れやすくなります。そのため、心の活動に必要なエネルギーが不足します。

 このような心気虚の状態になると、動悸が強くなり、息切れがして顔が蒼白になるほか、疲れやすい、汗をかきやすい、冷えやすい、舌が淡白で濡れて歯のあとがつく、脈が弱くなったり、脈拍が遅くなってリズムが不規則になるといった症状が現れます。ひどい場合には、恍惚状態となり、驚きやすくなったり、恐怖感が強くなり、悲しんだり、すぐ泣き、わけのわからないことをいうようになります。気と血の源は同じです。そのため、多くの場合、気虚は血虚を併発し、血虚の症状をともなうと(気血両虚)となります。

心の栄養が不足している場合

 心血虚では、持続性の動悸、驚きやすい、イライラや不安感が強い、寝つきが悪い、夢をよく見る、忘れっぽくなる、めまい、顔が蒼白、舌の色が淡白で細く、歯痕がハッキリせず乾燥ぎみ、脈が細くゆるやかになる、といった症状が現れます。

心の陰液が不足している場合

 もともと陰虚の素質がある人が、いつまでも思い悩んだり、強い悲しみや心配ごとがあると、心ともに肝や腎の陰血や陰精も損傷されます。このような心陰虚の人は、相対的に余った陽熱(心火)の勢いが激しくなるため、イライラや不安感、焦燥感が強い、のぼせ、激しいどうき、微熱、寝汗(盗汗)、顔面の紅潮、不眠、夢をよく見る、口乾、舌が紅く苔が少ない、脈が細く脈拍数が多い、といった症状を強く訴えます。

不安感、恐怖感の診断と治療

不安や恐怖は、五臓の異常


 不安感や恐怖感は、五臓が病むために起こる症状と考えます。どちらも同じメカニズムで起こりますが、恐怖感のほうが重い症状です。

対人恐怖と空間恐怖

 不安感や恐怖感の中でよく見られるのは、対人恐怖と、乗り物などの閉所に対する空間恐怖です。
@対人恐怖
 知らない人に会うと、胸がドキドキしたり、気持ちが高ぶる、不安になる、顔や耳が赤くなる、汗が出るといった症状が現れます。

A空間恐怖
 乗り物に乗ると、トイレに行きたくなるのが特徴です。登校拒否や出社拒否のほか、脳血管障害後遺症や、老人性痴呆症なども、このタイプと考えられます。

 また、対人恐怖と空間恐怖に共通する症状としては、暗いところをきらう、孤独感に襲われるなどがあります。

病因・病機で3つに分類

@肝虚
 動悸や疲労、頭がグルグルまわる、めまい、不眠、胸苦しさ、イライラといった症状をともないます。このような症状は、肝気が不足しているために起こります。

A腎虚
 動悸、めまい、不眠、胸苦しさ、イライラなどの症状に加えて、もの忘れがひどくなるのが特徴です。脳血管障害後遺症や老人性痴呆症にともなう不安感や恐怖感は、腎精の虚損が原因です。

B脾腎両虚
 動悸やイライラ、おなかの脹りとむかつき、食欲不振、めまいといった症状をともないます。このように、脾腎の陽気が不調なために水分代謝がうまくいかなくなって起こると考えます。

現代医学の考え

現代医学は、薬よりも精神療法が第一


 神経症は、不安を避けようとする過剰反応
不安神経症は、精神的な原因によって、精神的あるいは身体的な症状がひき起こされた状態で発症します。精神分析理論では、人格は本能と理性の、対立する2つの領域と、これらを調節して現実に対応しようとする自我の、3つの領域から成り立つと考えます。

 善悪を無視して本能的な欲求行動をとろうとすると、自我は、これをおさえて、精神の安定を図ろうとします。このような無意識的な働きを、防衛(適応)機制と呼びます。防衛機制には抑圧のほか、昇華や反動形成、移動、やり直し、知性化・合理づけ、取り入れ、内一化、投射や退行があります。

 防衛によって、理性が本能をうまくおさえことができれば、精神は安定します。しかし、うまくできないと、葛藤が起こり、不安を生みます。不安を避けようとして過剰な防衛機制が行われると、さまざまな形で症状が現れます。不安神経症では、理由がはっきりしない、漠然とした不安が症状の中心になります。また、主として交感神経の興奮による息苦しさや、めまい、脱力感、冷感、どうき、発汗、頻尿といった身体症状をともないます。

@器質性疾患ではない。
A心因性である。
B神経症としての特徴的な臨床像が存在するという、3つの点がポイントとなります。

 治療は、社会に適応できるように導く精神療法が中心です。まず、環境を変えて、外的要因を除きます。同時に、こころの葛藤を解消させるとともに、自己を見つめさせ、人格の再構成を図ります。うつ症状が強い場合には、抗不安薬や抗うつ剤による薬物療法を補助的に使います。

こころの病の治療には専門知識が必要です。相談フォームでご相談下さい。



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