PTSD(心的外傷後ストレス障害)

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侵入 回避性の症状・反応麻痺性の症状
侵入性症状 自律神経系の興奮及び過覚醒
回避・反応麻痺 自律神経系の興奮及び過覚醒の症状
治療
侵入

 日常生活で思いがけないような出来事に心を痛めるといった経験は誰にでもあることです。しかし、人はその出来事を思い出すたび「大変なことになった」というショッキングな気持ちや「なんでこんなことになってしまったんだ」という怒りの感情がよみがえってきます。それを何回か繰り返すうちに、その出来事を思い出しても、激しい感情が次第に薄れていき、最後には「大したことないではないか」というふうに思えてくるようになります。つまり、繰り返し思い出したり、その思い出を話したりすることで、その体験を消化し、既存の認知的枠組みに取り込むことに成功します。


 しかし、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になるような体験はその人の認知的枠組みに組み込まれることなく、どれだけ時間が経過したも過去の思い出とはならないのです。とういのも、その記憶はまるで「瞬間冷凍された体験」のように生々しく保存されてしまうからです。自らの処理能力を超えるような強烈な体験をした場合、心が自らを守るために、それを瞬間冷凍してしまうためです。それによって、その体験に関するさまざまな記憶、例えば視覚や聴覚などの諸感覚の記憶、情緒や感情、その際に抱いた考えや思考などはとりあえずひとかたまりとなり、心の他の領域に影響を及ぼさなくなります。

 通常の記憶の場合には時間が経つにつれその質が変化していくものですが、このトラウマは「瞬間冷凍」であるため、鮮度はずっと保たれてます。かなり時間が経過した後、何らかの理由で瞬間冷凍された体験が解けた場合、そこに凍り付いていた記憶の一部は、非常に生々しいかたちで心に侵入してくるのです。

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侵入性症状

  • トラウマとなった出来事を再体験する。
  • トラウマ体験を思い起こさせる刺激(トラウマ体験と同じ様な場面、例えば音、臭い、場所、時等)が引き金となることが多い。
    1. 突然興奮したり、過度の不安状態(パニック)になる。
    2. 突然人が変わったようになる。
    3. 突然現実にないことを言い出す。
    4. 子どもの場合、トラウマ体験を思わせる遊び(ポスト・トラウマティック・プレイ)や話を繰り返す。
  1. 解離性フラッシュバック
    • トラウマ体験の重大な場面が鮮明によみがえり、再びまるでトラウマ体験が今まさに起こっているかのように感じる錯覚
    • 精神状態が現在の自分から解離して、恐怖体験時に戻ってしまう。
  2. 侵入的想起
    • トラウマ体験とは全く無縁の日常生活をしていても、本人の意思に反して、トラウマ体験を反復的強迫的に想起させる。
  3. 悪夢
    • トラウマ体験の夢を繰り返し見る。

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回避・反応麻痺

 侵入性症状は思い出したくないのに思い出させてしまうというものですが、回避性症状(狭窄)は健忘のようにトラウマとなった体験を思い出させないようにするものです。一見正反対ともいえるような状態が同居していることをどう理解すればいいのでしょうか。この事を理解するためには、先に述べた「体験の瞬間冷凍」という考え方が役に立つと思われます。

 回避性(狭窄)の症状はトラウマ体験を思い出させるきっかけとなりうる刺激を避けようとするものであり、瞬間冷凍されたトラウマが解凍されて自己を抑制したり、あるいは解体してしまうような状態を避けようとする意味が含まれています。一方、侵入性の症状はある意味ショッキングな体験に対する通常の反応と類似したものであると言えましょう。

 このようにしてみてみると、一見正反対にみえる回避性症状(狭窄)と侵入性症状はいづれもトラウマから自己を守ったり、あるいはトラウマを解消しようとするこころの動きが固定化し、何らかの不適応をもたらす症状になったものと理解できるでしょう。


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回避性の症状・反応麻痺性の症状

  • 回避・マヒ・感情鈍麻
    1. トラウマを想起させる刺激(例えば、バスジャックを体験した人にとってはバスなどがドリガーになります)からの回避。
    2. 心理的、身体的な症状により社会参加が制限され、引きこもったりが生じます。また、友人との関係もうっとうしく感じるようになります。
    3. 会話をしなくなったり、表情が乏しくなります。
    4. 全体の活動が低下し、顕著なケースには食事などの基本的な日常生活も取れなくなります。
    5. 記憶力や集中力の低下あるいは趣味や性的な関心もなくなります。
    6. 将来が著しく制限されてしまったような感覚が生じ、人、人生、将来に対する態度の変化が見られます。「こんな思いをしながら、どうやって生きていなければならないのか?」「自分は変わってしまった」「生きる価値なんてない」などと思いこむことがあります。
    7. 失感情症を伴う場合もあります。
    8. 注意しなくてはいけない事に、児童虐待のような幼い時点でトラウマが生じた場合、もともとその人の性格が、無気力で抑うつ的な人格であると理解してはいけないということです。つまり、PTSDの症状で深刻な人格の変容が生じている可能性があるためです。
  1. トラウマを想起させることからの回避
  2. 孤立感
  3. 引きこもり
  4. トラウマの重要な局面の想起不能

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自律神経系の興奮及び過覚醒

 トラウマになるような危険にされされている状況では、周囲の刺激に敏感になったり、神経を興奮させて不測の事態に備えておくことが、逃げるにせよもしくは戦うにせよ自分の身を守るために必要なことであり、状況に適したものであると言えるです。また、そうした危機状態が去った後でも、しばらくの間は危機の再来に備えて興奮状態を維持したおくことも、事態に対応した適切な反応です。

 しかし、危機状態が去ってかなりの時間を経てもこうした状況が継続し、それが日常生活の妨げになっている場合には、これらの興奮や過覚醒は症状となってしまいます。』

 健康な人なら持っている、警戒しながらリラックスもしているというレベルの注意の「基準」がなく、覚醒の基準が高くなっているのです。

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自律神経系の興奮及び過覚醒の症状

  • 危険を予測して常に身構え、神経が張りつめた状態となります。
  • 些細な物音に驚いたり、必要以上におびえたり、不眠、落ち着きのなさ等がみられることがあります。
  • 睡眠障害では「なかなか頭を静めることができない」「音が耳に響いている」などの訴えがあり、寝付けなかったり、寝ても途中で起きてしまったり、短時間しか眠ることができません。
  • トラウマは自律神経系を過剰に刺激するため、ドキドキしたり、些細なことで大げさに驚いてしまう驚愕反応を示すことがあります。
  1. 睡眠障害
  2. 注意集中の困難
  3. 過剰警戒
  4. 極端な驚愕反応

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治療法
運動療法

 アドレナリンの過剰状態である過剰興奮を解消するため、毎日の生活の中に運動することを取り入れる。

効果:大変前向きな気持ちにさせる上、副作用がないのでよい。適度な運動は睡眠薬1錠ほどの効果がある。抗鬱剤よりやる気が出る。

投薬療法
  1. PTSDの主症状に対して
    第一選択はSSRI(選択的セロトニン再吸収阻害薬)である
    • 効果は早ければ2〜4週で現れる。
    • 12週程度は使用する。
    • trazodone(デジレル、レスリン)はSSRIによる不眠を抑える上で効果的である。
    SSRIの効果がなければTCA(三環系抗うつ薬)にかえていく
  2. PTSD以外の全般的不安に対して
    • benzodiazepinesは最初から投与してもよい。
    • PTSD症状そのものには効果がないので、漫然と継続しない。
グループワーク
 グループ活動を中心とした治療プログラム。みんなと励まし合いながら、病気を克服して行けるメリットがある。


TFT(思考の場療法)
 ある順序で経穴(ツボ)をタッピング(指でトントン叩く)すると、心理的動揺が緩和されPTSDなどの症状が、約5〜15分で改善・消失すると言われている。


その他
漢方療法

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「トラウマ」西澤哲氏より
大阪市住吉区山之内1丁目24番21号
コンドウ薬局06-6695-2069