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  5. カイワレダイコン発芽テストの実験についての考察

カイワレダイコン発芽テストの実験についての考察

  1. 合成洗剤水溶液で育てたカイワレダイコンの根がらせんを描いて成長したことについて

    重力に対して根は正の重力屈性を、茎は負の重力屈性をもつ。このような重力屈性はオーキシン(植物ホルモン)の作用による。重力の刺激によりオーキシンが下降して下側のオーキシン濃度が高くなり、その濃度において根では成長が抑制され、茎では成長が促進される。(参考文献1)

    合成洗剤水溶液で育てたカイワレダイコンの根がらせんを描き、上を向いて成長したのは、オーキシンの作用に合成洗剤が何らかの影響を与えたからではないかと考えられる。与えた影響の可能性として次のようなことがあげられる。合成洗剤が植物内でオーキシンと同様の働きをし、根において成長が抑制されるオーキシン濃度とみなせる部位が変化した。あるいは、合成洗剤がオーキシンに対する根の感受性を変化させ、通常のオーキシン濃度で成長が促進されるようになった。詳しくは吸収された合成洗剤の根での分布を調べたり、吸収される合成洗剤の量を変化させてみる必要がある。

    使用した合成洗剤はアルキルエーテル硫酸エステルナトリウムであるが、セッケン(脂肪酸ナトリウム)でも一部に同様の現象が見られた。このことから、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウムに限らず、界面活性剤は広くオーキシンの作用に影響を与えるものと思われる。

  2. 合成洗剤水溶液で育てたカイワレダイコンの葉が茶色くなり枯れかけてきたことについて

    合成洗剤水溶液で育てたカイワレダイコンも通常の光屈性を示すことから、茎においても根におけるように合成洗剤がオーキシン(植物ホルモン)の作用に影響を与えたとは明らかに言えない。合成洗剤が茎まで上がってこないのか、茎のオーキシンに対する感受性に影響を与えないのかどちらかであろう。合成洗剤は根毛にほとんど吸着されて茎まで上がってこないという報告もある(参考文献2)。

    合成洗剤水溶液で育てたカイワレダイコンの葉が茶色くなり枯れかけてきたのは、合成洗剤の直接の影響よりもむしろ次のようなことが考えられる。合成洗剤の影響で根がらせんを描きながら成長したため、脱脂綿に根がしっかりと入り込まず、水の吸収が十分にできなくなり枯れかけてきたというものである。詳しくは吸収された合成洗剤が茎や葉にまで分布しているのかどうかを調べる必要がある。

  3. 合成洗剤水溶液で育てたカイワレダイコンの発芽が早かったことについて

    種子の発芽は、水分を吸収して膨張し、種皮が破けることによる。合成洗剤水溶液で育てたカイワレダイコンの発芽が早かったことから、合成洗剤は水分の吸収をしやすくしていることが考えられる。これは界面活性作用から十分に考えられることである。発芽の際に及ぼしている合成洗剤の影響は、その後の成長時に及ぼす影響とは異なっている。

[参考文献]

  1. 太田次郎,丸山工作 編,"高等学校生物IB",p.209,啓林館(1995).
  2. 小林 勇,"よくわかる洗剤の話",p.79,合同出版(1989).