アタリがつく



「アタリがつく」・・・こんな業界用語がある。
趣味の自転車の事でネットをいろいろ探索していて見つけたのだが、きっと車とか機械とかの整備関連業界の言葉だと思う。

機械に初期不良はつきものである。ブレーキだとかギヤだとか、そうした部品は新品の頃は接触面にミクロン単位の凹凸があってスムーズな動きを邪魔し、時としてトラブルの原因になる。

それが何度も同じ動きを繰り返していくうちに、接触面のわずかなザラツキが次第になくなっていき、そのうちにすんなりうまく全てが動作するようになるのである。

こんな良的変化をメカの専門家たちは「アタリがついた」と表現したわけだ。
エンジンの慣らし運転もその範疇だろう。ピストンやシリンダ等の表面のわずかな凹凸が摩擦により消え、それはより滑らかな回転となり、振動が減ったり音が静かになったりする。

一度アタリがついてしまえば、まず当面は変なトラプルは起こらない。なかなかにうまい言い回しだなとひとり感心したわけだが、考えてみれば、人間だって全く同じ理屈で動いていることに気がついた。

人の場合、これは「慣れ」とか「熟練」という言葉があてはまる。決して「あいつはやっとアタリが付いてきた」とかは言わない(^^;

「熟年」とか「円熟」も、つまりは人生や仕事にアタリがつくという意味ではないだろうか。飛行機が離陸した後の「水平飛行」にも同じイメージがある。

ただ、自身のこれまでを思うと、まだアタリがついたという感触は得たことはない。アタリなんて全然つかめぬまま、ギクシャクと動作する日々が延々続いている。

先日、どうしても動きにムラがあった自転車のブレーキ部分の軸が、ある日を境にすんなりキレイに動作するようになった。これぞ「アタリがついた!」と実感したわけだが、この感触、いつか人生や仕事でもぜひ味わってみたいものである。



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