36ウシ牛
薬用部位:角、よだれ、糞、尾、腎臓、歯、眼球
薬効:リウマチ、打撲、打ち身、食物がのどにつかえる病気、尿閉、小便不利、腎臓炎、咽痛。
使用法
リウマチ
歯、または眼球の黒焼きを、一日3~6g飲む。これで軽快することがある。
打撲
高いところから落ちたり、ころんだりして痛む場合には、糞を痛むところに貼りつける。朝夕とりかえていると、たいていは四、五日で治る。新しい糞のないときは、水を少し入れて煉ってからつける。
食物がのどにつかえる病気
古人は牛のよだれを、膈噎いう病気に用いた。膈噎というのは、食物がのどに痞えて下がらない病気であるが、胃癌、食道癌もこの中にふくまれている。私は先年、胃癌の患者に、この牛のよだれで団子を作って用いてみたが、効がなかった。古書に、牛転草がギュウテンソウ、やはり膈噎に効くと出ていたので、いろいろと調べてみたところ、これは牛が一度食べてから吐き出した草のことであった。それで、これも牛のよだれがきくのだということがわかった。たしかに、牛のよだれは、喉の痞えるのによく、食道癌なども、これで一時軽快することがある。
尿閉
急に尿の出が悪くなって詰まるよう場合には、牛の尾を黒焼きにして、一回に7~10gを飲む。
腎臓炎
牛の腎臓を、700㏄の水に入れ、半分に煮つめて、三回に分けて飲むと効があるといわれているが、私はまだためしたことはない。
咽痛
角をけずり、これに陳皮をまぜて黒焼きとし、梅干しで煉って、絹の袋に包み、口中に含んでいるとよい。
関節リウマチにきいた牛の腹球と歯
以下の三例は、昭和六年ごろの「主婦の友」の読者の体験例である。「その方法があまりに珍しく、また効能が恐ろしく早く現われるのに驚いた私の兄の実験ずみの療法です。昭和五年の秋、兄は関節リウマチにかかり、長らく医療を受けておりましたが、ある日、近所の牛肉屋さんが、リウマチにきくといって、牛の目玉をもらい来た人がありますよとて、大きな目玉を六つおいて行かました。さっそく、教わったとおり、素焼きのどびんを用意し、それに目玉を入れ、赤土をぬって密封し、強火にかけて焼きました。すると、ジュウジュウ音をたてて、いやたにおいがして焼けますが、それがなくなったときは焼けたのですから、とり出して、粉末にしました。六つの目玉で杯一杯ありましたが、その四分の一を一度に飲みました。飲んで二十分もしたかと思うころ、痛みのあったところがジュジュと音がし、翌日残りの三分の一を用いると、また三十分ばかりして同様の音がします。不思議と思ううち、兄は、どうやら足が軽くなったと申して歩いていました。次の日は、座っても歩いても痛みを覚えないとりこと。こうしてわずか二、三日で全治しました。昨年の冬、再発を恐れておりましたが、その心配も無用でした」
「私の母は、長年リウマチで非常に苦しみ、着ることはもちろん、起居にさえ人手を借りたければなりませんでした。屠牛場トギュウから赤牛の上あごの前歯二本をもらって来て、壷に入れて粉末にし、毎回少しずつオブラートに包み、一日三、四度ずつ用いましたところ、二週間後には独りで便所へも行け、帯もしめられるようになり、一カ月ほどのちには全治して、以来、時候の変り目にも再発しません」
「私は関節炎にかかって、一カ月間というものは寝起きさえもできないほどで、大変苦しみましたが、ある人から、牛の歯の黒焼きを頂いて服用すると、三日目ごろから非常に楽になり、五日目には全治して、その後は再発もいたしません。黒焼きの仕方は、一頭分の牛の歯を、切りもち三片くらいでよく包み、あき缶に入れて針金でよくくくり、蓋のたき口か、竃のたき火の中に入れて焼きます。焼けると、振ったときカラカラと音がしますから、とり出してすり鉢でよくすって粉末とし、大人は小さじ二杯を一日分として服用します。飲みすぎると、のぼせて鼻血が出ます少々ザラザラしますが、飲みにくいものではありません」 |
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