【モーツァルトに想う】
田 中  一 美


 モーツァルトの曲は、一般的に明快でシンプルという言葉でよく表現される。でも、その言葉どおり感じてはいけない。常に彼の音楽は愛にあふれ、清純無垢でありながら驚くほどの大胆さやユーモアを持っている。つまり、演奏する者がいかに一見シンプルに見える音符の裏側や奥深くを読み取れるかによってモーツァルトの音楽の生命がよみがえるのではないかと思う。流麗さや軽快さ、うたうこと、間、音色など…何もかもが自然に生き生きと自由に聞こえてほしい。

最近になって、幼い頃に学んだモーツァルトとは違った感じに見えてきて、一枚目のCD録音にはモーツァルトを選んだ。
 今回、リスト協会スイス・日本の会長で、ピアニストのリヒャルト・フランク氏が、指揮者のボリス・モノソン氏率いるチェコを代表する室内管弦楽団のソリステイ・ディ・プラガとの出会いを与えてくださり、その夢が実現した。音楽を通じての、多くの出合いに心より感謝します。

1995年8月