釣りに狂った人たち


ヒマさえあれば一文字へ通い始めた頃、真剣に悩んだ事があった。こんなに毎週毎週通い詰めて、渡船店の人に「えらいよく来るなぁ?」と変な奴に思われはしないか?

ところがドッコイ、そんな不安はあっと言う間にぶっ飛んだ。毎週くる奴なんてザラどころか極めて正常な釣人レベルなんだと知らされた。今、思えばなんと純情な釣人だったことか。釣人なんて、とんでもないやつのオンパレードなんだ。

このあと、釣り雑誌社に入社したこともあり、その間、とんでもない釣りバカたちにイヤというほど接してきた。

よく聞いたのは「釣り離婚」というコトバ。釣りに行ってから帰ってきたら「家財道具から嫁さん子供まで全部、もぬけの殻になってた」という人。
「オレが釣りやってへんかったら、今ごろ家が4・5軒建っとるやろな」と豪語する人。週のうち半分は磯釣りに出かけ、車の中で寝泊まりし、車=住居と化している人。

いったいどんな仕事をして、どうやって収入を得ているのか?。この人から釣りを取ったら、あとに何が残るのだろうという人をイヤというほど見てきた。

忘れもしない出来事がある。
ある週末、朝から一文字に渡り、正午前、帰りの渡船を待っていた時のことだ。この時間の渡船は、帰る客とこれから夕まづめを狙う客とが入れ替わる便となる。

渡船がやってきて接岸したとたん、私の後にいた釣人が、船に乗っている釣人の一人を見て叫んだ。
「お前、朝ここに来てて、ちょっと前に帰ったやないか!?…また来たんかいな!」。

釣りのダブルヘッダーである。こんな人が、それこそ釣人界には掃いて捨てるほどいるのである、やれやれ。

現在、釣りに身も心も夢中の方々へ。よほど釣りに熱心になっても、釣人界にくれば誰も変人扱いしないので、どうかご安心を。



INDEXNEXT



Copyright(C) SunPlus All Rights Reserved. 企画制作・著作/武富純一[メール]