大阪空港で気分転換



私は大阪空港のすぐ近く、蛍池という街に住んでいる。
こう聞けばさぞかし騒音でうるさい街と思われるかもしれないが、そんな弊害は全く感じたことがない。近頃のジェット機は技術進歩のためかあまり大きな音は出さない。加えて南の方に関西新空港ができて発着本数が大きく減ったこともあるのだろう。

会社勤めをしてた頃は出張で度々飛行機を利用した。家から歩いても10分ほどだから便利この上なかったのだが、最近は全く飛行機に乗る用事が無くなってしまった。

だから空港へ行く用事なんて何も無い・・・とずっと思っていたのが、これは間違いではないかと気がついたのだ。

毎日、家でパソコンに向かい、なにやらヤヤコシイ仕事をこなしていると、「モウイヤダッ!!」となる事がある。

こんな時は場所を変えて気分転換するに限る、といわけでリュックにノートPCを入れ自転車に乗って、近くのファーストフード店や喫茶店で仕事を続けることがある。

で、ある日、ふと思ったのだ。
「そうか、空港があるじゃないか!」

そこには喫茶店なんて何軒もあるし、本屋もATMもある。様々な店舗もいっぱいだ。屋上はスカイラウンジとして無料開放されている。自宅の目の前に、とっても素敵なこんな「娯楽施設」があったのだ!。

いままで全然気がつかなかった。灯台もと暗し・・・東京に住んでて東京タワーに登ったことがない、京都に住んでて金閣寺に行ったことがない、そんな類と同じだろう。

ノートPCを緑色のリュックに担ぎ、でっかいカメのような出で立ちで自転車で向かい、駐輪場に停め、「出発ゲート」からいそいそと中へ入る。私は別にどこにも出発しないのだけれど(笑)

中は旅行者やビジネスマンたちで大にぎわい。関空にお株を奪われたとはいえ、交通アクセスの良いこの空港は価値がある。この先、もっと再評価されてもいいだろう。

目的地へ飛び立つ人々100%のただ中に、ここから飛び立つこと無き異質なオッサンがひとりウロウロ・・・。

見晴らしの良さそうな喫茶店を探し、窓近くに陣取る。
パソコンの電池が切れるまでしか仕事できないから、長時間の仕事は無理。その分、集中力が極めて高くなるので、仕事の「濃さ」は自宅でするより何倍も体感できる。

ひと息ついてコーヒーを飲みつつ、広い窓から滑走路をワイドに見渡してみる。
夕暮れが迫り、様々な色の灯りが幻想的に点滅し始める中、鋭角なジェットやおっとりプロペラ機たちが次々に到着し離陸していくのをボケーッと見物する。
飛行機なんて、ライト兄弟が初飛行してわずか百年ほどしか経ってないというのに、なんだこの進歩の凄さは・・・。エライ時代に生きてるなぁと感慨深い。

仕事に区切りをつけ、帰りに「蓬莱」で豚まんと餃子をお土産に買った。
家から10分の所へ行って、お土産も何もないと思うのだが、なんだか行列に並んでみたくなったのだ。結果、えらく高くついてしまった気分転換だが、旅行者気分も少し味わえた。これから時々利用してみようと思う。
もう、お土産は買わないけど。



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