革サドルの魅力



愛用の自転車に革製のサドルを取り付けた。
イギリスの革サドル専門メーカー「ブルックス」の銘品だ。
世界的な人気高騰に加え、ハンドメイドなので製造が追いつかずいつも在庫切れ・・・それを待ちに待ち続け、先日ようやく送られてきた。

優れた機能とデザインを有する今風の樹脂製サドルが山ほど出ている現代に、なんでそんな時代遅れなものを・・・事情を知らない方はきっとそう思うだろう。

理由はただひとつ。
革サドルはじっくりと使い込むうちに徐々に体形に馴染んで順応していき、最後には自分にとってのベストなフォルムができあがるからである。
そして、一度そのフォルムができあがると長時間乗っても痛みが生じず、疲れ知らずの快適な乗り心地をずっと楽しむことができるのだ。

パソコンを自分の思いのままに使いやすく設定していく作業を「カスタマイズ」というが、この革サドルもつまりは全く同じである。

それに、しっかり手入れをすれば壊れるなんてことはなく、樹脂サドルと比べればそれこそ一生ものの価値ある用具となるのである。将来、もし自転車を買い替えることになっても、この革サドルは間違いなく新車へと使い継がれていくことだろう。

というわけで、当然ながら今の乗り心地は全然良くない。
革はまだ硬くて真っ平らだし、乗ると違和感があり、長時間跨ったままだと痛みも少し出てくる。しばらくはこの状態が続くことだろうが、この我慢こそが快適な乗り心地ワールドへの唯一の道なのだ。

自分の手で自分だけの専用サドルを育て上げていく・・・プロセスの楽しみこそが趣味の醍醐味なのだ。

夜ごと専用の革クリームをスリスリと塗り込みつつ、風と一体化してサイクリングロードを快適に駆け抜けていく私がいる。
・・・なんとも重たげな風ではあるが。



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