自転車、快適走行の悩み



この夏に、ちと上等のオシャレな自転車を買った。
マニアックな自転車には、大きく分けて本格派が乗るドロップハンドルのロードタイプと、デコボコ道対応のマウンテンバイクがあるが、私は、仕事仲間の勧めもあってクロスバイクにした。(トレック7.7FX/2006年モデル)

クロスバイクというのは、先の2つのタイプ両方の良さをミックスさせた自転車だ。
よく言えば「エエとこどり」、悪く言えば「どっちつかず」なのだが、私みたいな肥満中年がちょっとした街乗りや日帰りツーリングなんかをするには最適な自転車なのである。

さて、自転車を快適に乗りこなすためには、自分の体に合った各所の調整が不可欠だ。
まずはサドルの高さを決める。
跨ってみて、ペダルを最下点にして脚を軽く伸ばした長さが基準だ。高すぎると危険で漕ぎにくいし、低すぎると効率的な漕ぐパワーが出せない。
何度も上下に調整してみては、しっくり漕げる高さを探っていく。

これが決まると次はハンドルの高さである。併せてサドルの前後位置も調整する。この位置決めは結構大切で、サドルの前後位置次第で乗り心地は意外に大きく変わるのだ。

ハンドル高さの次はブレーキレバー、ギヤチェンジレバーの位置決めとハンドルエンドの角度調節。そしてタイヤの空気圧だ。
あまりに固いタイヤだと路面の振動がモロに手元まで伝わってくる。柔らかいとクッション性は向上するが、道に接する面積が大きくなる分、走行効率は落ちる。このちょうど良い空気圧の目安がなかなかに難しいのだ。

ざっとこれらが基本なのだが、「これでバッチリ!」と思っても、いざ走り続けているうちに、どこか違和感を感じるところがまた新たに出てくる。
で、またもや何度もネジを緩め直しては各パーツの微調整を続けていく。

そのうち、なんだかしっくりと自分の体が収まって無理なく快適に走れるベストポジションが全身で理解できる段階になり、「これでもうバッチリ完璧!」と叫びたくなる時がくるのだが、ドッコイ、ここで安心してはならない。まだ先があるのだ。

ある時、なんだかまた別の新たな違和感を感じ始めるのだ。
「オカシイ・・・苦労して作り上げた完全なポジショニングのはずなのに・・・」と悩んでいるうちにふと疑問が解けた。

なんのことはない、自身の自転車テクニックが上達して、漕ぎ方や走行姿勢、筋力など、体そのものが進化しているのである。

自転車という乗り物は、すなわち乗り手の体そのものがエンジンなわけだから、エンジン性能が向上すると、当然すべてのパートにわたって新たな調整の必要性が出てくるのは当然なのだ。

かくして、またもやより高度な設定調整の迷いの世界に突入していく。
こうして身体と自転車は相互に関与しつつ、自身にとっての理想の快適走行を求めてカスタマイズされていく。

この作業に終わりは無い。そしてしまいにはもっと高性能の新たな自転車が欲しくなってしまうのだ、やれやれ。

先日、またもや悩みつつボルトをいじっていて、なにかに似ているなと気づいた。
これってつまり、仕事とか人生とかと全く同じですね。

2007.10


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