MTBで深夜の徘徊


深夜にMTB(マウンテンバイク)で近所を徘徊するのがクセになっている。
運動不足解消・・・という行儀の良い理由では決してなく、
乗った後のほどよい肉体疲労のお陰でぐっすりと眠れるからだ。

MTBは、もともと山野を自在に駆け抜けるために設計された高性能自転車だから、
街中のアスファルトを走るなんてのは、もうあっけないほど快適で、
慣れてくれば、少しくらい走り込んでも全然苦にはならない。
(タイヤはもちろん街中タイプを装着)

自宅近くの阪急蛍池駅を挟んで
手前の豊中駅からひとつ先の石橋駅の間が主な徘徊経路である。

玄関を出て左に方向を定め、まずは石橋駅へ向かう。
春とはいえ、深夜の空気は意外に冷たい。
ローギアをゆっくりと踏み込んでいくと、
重たいペダルが徐々に軽い回転に変化し、
たちまちにして風を切る音に包まれ、吐く息が自然に強くなる。

最初に通るのは石橋商店街。
最終電車の前だと、帰宅を急ぐ人たちでまっすぐに進めないので、
最近は一時を過ぎた頃にここを通ることにしている。

深夜営業の居酒屋が終わる時間帯なのか、
バイト帰りとおぼしき若者がバイクで私を追い抜いていく。
閉店で閉め出されたいくつかのグループが、
まだ呑みたらないのか路端にたむろしている。

商店街を抜けると大きく左に迂回してUターン。
ひたすらペダルを漕ぎ、蛍池駅を過ぎて今度は豊中駅に向かう。
このあたりはちょっとした住宅地だから深夜でも道は明るい。

薄暗い景色の中に近づいてくる白くて明るい一角は
言わずと知れたコンビニだ。
ローソン、ファミマ、サークルK・・・
通りすがりに中を覗くと、こんな時間でも結構ヒトがいて、
どのコンビニもしっかり儲かっている様子だ。

先日は、阪急の線路横を通る時、
線路をチェックする異様なデザインの専用車を初めて目撃した。

ライトを付けて停車している車の中では
若者たちがヒマそうに煙草をふかしている。
車中でじっと黙りこくって前を見つめているアベックもいた。

巡回中のパトカーとすれ違うこともある。
思わず、お巡りさんと目が合ったりして
別に悪いことはしてないはずなのだけれど、妙に緊張したりする。
こんな時間にサンダルはいて赤いMTBにまたがったオッサンなんて
かなりアヤシイと自分で思う。私が警官なら絶対に職務質問してやるのだが・・・。

歩道に座り込んでワンワン泣いている女の子とそれをなだめる友人たちも見た。
警官たちを前に、「やってません!」と必至で抗弁しているバイク青年・・・
先日は、電信柱さんと何やら真剣に会話をしている若者を見た。

信号待ちの合間に、スピードメーターのデジタル表示を見ると午前二時。
・・・さぁ、帰って寝ようっと。



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