風になった気分


風の中を、風と同速度で進むと無風状態を感じる・・・
理屈では解ってはいたが、これを正に“体感”できた日であった。

仕事仲間からMTB(マウンテンバイク)を譲ってもらい、
別の仲間の案内で、とある河川敷をゆっくり走っていた時のことだ。

行きは、いわゆるアゲインスト、
つまり向かい風でやたらにペダルが重かった。
ところが引き返す段になると、下げインスト・・・ん?・・・ではなく(^^)、
フォローの風にまさしく“包み込まれて”しまったのである。
いわゆる「追い風走行」だ。

風の力というものは強い。
ヨットが進むのも風力発電ができるのも、その強い力のお陰だ。
陸上競技だって、
追い風での記録は公式記録にならず参考記録になってしまうのだ。
MTBにドンと乗っかる私は図体がデカイので、
そのまま「帆」になったようなものなのだ。

MTBごと風に押されて前進していて、
ペダルは仕方ないからオマケで漕いでいるようなもんである。
そして、顔に当たる風は全く感じないのだけれども、
すぐそばに見える草木は大きく風に揺れている。
風と一体化して空間を無風状態で移動していく自分・・・
これは一種不思議な感覚だった。

このMTBを譲り受けた時、
「風になった気分を味わえますよ」と言われたが、
ようやくその意味を全身で理解することができた。

MTB、これを自転車と呼んではいけない・・・
自転車とは全く別の、風になれる素敵な乗り物である。
そう確信した日であった。



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