業界用語に遊ぶ



職業の世界には、それぞれの専門分野のプロフェッショナルが無数にいて非常に奥深い世界が広がっている。そしてそこには「業界用語」なるものが必ずある。その世界では普通に話されているのだが、一般人には決して馴染みのない理解不可能なコトバたちだ。こうした言葉に触れるのは、心に涼しい風が吹くようなちょっと新鮮な気持ちを味わえてなんだか楽しい。

先日、運送会社で仕事してる人から「横持ち」「ドッキング」なる言葉を教えてもらった。「横持ち」とは荷物をより細かな行き先ごとに、大きな車から小さな車に移す作業のこと。ドッキングとは、配送中の車を後から追いかけて追加の荷物を渡すこととか。聞けば「なるほど!」で、何か自分が少しその世界に詳しくなった気になる。

その昔、私は広告業界の端っこでウロウロしていたのだけれど、モデル撮影の仕事で、事務所のマネージャーから「ロクナラビ」とか「ハチナラビ」という言葉を聞かされた。もちろん初めて聞く言葉で何の事やら解らない。話が進むうちに、「ロクナラビ」とは66,666円のことだとわかった。1割の源泉徴収分をあらかじめ足した額のモデルのギャラの額で、徴収後の取り分はちょうど6万円となるわけである。なるほど、うまくできてる言葉ではある。そのほか「アポ」「クライアント」「プレゼン」なんかもこの業界の用語だと思うが、今ではなんだか普通の言葉になってしまった。

なにか面白い業界用語はないかな・・・とネット検索していると、タクシー業界用語で「着発」というのを見つけた。客を降ろしたとたんに次の客が手を挙げるというオイシイ状態のこととか。
ホテル業界用語で「どんでん」というのを見つけた。宴会と宴会の間の準備時間が極めて短い超バタバタの状態のことを言うらしいが、なんだか従業員のせっぱ詰まった緊張状態が伝わってくるような語感だ。

また、風俗用語で「まき餌」というのを見つけた。とうの昔に辞めた人気のあった女の子が在籍しているようにみせかけて客を呼ぶこと、辞めた女の子を餌にして客を釣ること、とあった。私は趣味で魚釣りをしますけど、「まき餌」が風俗用語だったとは知らなんだ(^^;

そういえば釣り用語にも「ガン玉」(丸くてちっこい鉛の重り)とか「タナ」(水面から針先までの仕掛けの長さ)とかがあり、私たちは仲間と普通に話しているけど、よく考えれば釣りを知らない人には「??」だろうなぁ。

何かの機会にいろんな業界の人と話する時に、こうした聞きかじりの業界言葉をポロッと使ってみたりすると「なんでそんな言葉知ってるの?」となる相手の反応が面白かったりするのである。



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