それでは、パソコンの候補をSE/30(とClassicII)に絞るまでの「下調べと熟慮」について、ふりかえっておきましょう。
辻本がパソコン購入を考え出したのは1987年ごろのことでした。目的は蔵書録の整理です。蔵書が500冊になったときに作り始めた図書カードは既に1000枚を超え、図書館のような整理ケースがなかったために、記入はしたものの、ほとんど使えないような状態でした。それでパソコンでの整理を考え始めたのです。そのために、機種選びよりも、データベースソフトの検討から入りました。
手元にデータベースソフトを特集した「98magazine」の87年12月号が残っています。掲載されたソフトの中では、比較的自由度の高いNinjaにひかれていました。
ちなみにNinja以外に取り上げられているソフトは次の通り。
dBASE III、桐、TIMS
II、MRDB、VP-planner、zonabase、ミューCOSMOS、スウィングVer.3、アイリス・ウィンドウズ、The
CARD2、ANYWAY、MY CARD98EX。
当時MacはPlus、SE、IIが存在しましたが、辻本はまったく意識していませんでした。存在自体を知らなかったかもしれません。87年の10月には「PC98-LTガイドブック」や「パソコンのわかる本」なんていうのを買っていました。会社の先輩が98をつかっていたこともあり、98以外は念頭になかったようです。
それでも、今ひとつ思い切れませんでした。「パソコンのわかる本」を見ても、あまりわからなかったことも関係していたと思います。もともと、機械よりもソフトを使うことに目的があったので、面倒くさいのはいやだったのです。ずるずると日が経ちました。
90年6月の「ASAhIパソコン」も残っています。ボーナス向け購入ガイド特集号です。この号では▽ブック型・ラップトップ型▽デスクトップ型▽マッキントッシュ▽AVパソコン--と4つに分けて紹介されていますが、このころでもまだ、エプソンのPC-386Mがいいかな、なんて考えていました。
そんな状況が一変したのは91年の夏ごろです。何かの機会にファイルメーカーIIというMacのデータベースソフトの存在を知りました。そして、探していたのはこれだと気が付いたんです。運命的な出会いでした。決め手になったのは、自由度の高さもさることながら、Ninjaなど98のソフトが真っ黒の画面に白や緑の文字を打ち込んでいくのに対して、ファイルメーカーでは真っ白な画面に黒い文字が並んでいることでした。
そんなにファイルメーカーIIが気に入ったのに、なぜ最初に買わなかったのかという声が出るかもしれませんね。買うつもりだったけれど、プローズには在庫が無かったんです。あとでまた書きますが、SE/30入手後に大阪・日本橋へソフト類を買いに行き、12月11日に購入しました。6万円!。昔はソフトが高かったんです。以来、ファイルメーカーProに変わってからも何度もバージョンアップにつき合い、今でも辻本のメイン使用ソフトの一つとして活躍しています。
それから一気にMac購入の準備が本格化しました。90年10月にそれまで非常に高価だったMacのイメージを転換させる新シリーズ、つまりClassic、LC、IIsiが発表され、初心者向けを含むMacの情報量が増えていたことも幸いしました。早速MacPower誌を買い始め、MacLIFE、MacJAPAN、MACWORLDのバックナンバーも立ち読み。また91年8月だけでMacの本を10冊買いました。そして、たんなる機械でなく、Macの生い立ちそのものに魅せられました。はまりました。つまり、すっかり「信者」になってしまったんです。
このとき買ったMacの本は次の10冊です。
「マッキントッシュを理解するために」(冬樹社)「林檎百科」(翔泳社)「マッキントッシュがヴィークルになる日」(ビー・エヌ・エヌ)「Mac
Sunday
愉快なスタック道場入門」(双葉社)「10語で使いこなす ハイパートーク入門」(ビー・エヌ・エヌ)「Macintosh
ゲームブック」(同)「マッキントッシュを理解するためにII」(冬樹社)「ハイパーカードでの第一歩」(同)「Classicとつきあう本」(ソフトバンク)「マッキントッシュの事典」(日本実業出版社)。
これを見ると、HyperCardにも大きな関心を寄せていることがわかります。当時は現在のようなHyperCardプレーヤーではなく、スタックを作れるLite版が付属していたのにもかかわらず、わざわざ製品版を最初に買ったのは、ファイルメーカー同様にHyperCardに魅せられたせいでした。
購入時期は、もちろんその冬のボーナス。あとはどのMacを買うかという問題だけでした。雑誌の記事などで、前年にでた3機種のうちもっとも安いClassicは、やはり力不足であることがわかり、候補から落ちました。また、蔵書カードの整理というメインの目的から考えるとモノクロでも十分だったことや、いろんな本を読んでMacの生い立ちに魅せられていたため、初代Macの面影を受け継ぐSE/30は魅力的でした。しかしSE/30はすでに製造が終了していたことと、91年10月にはClassicIIが発表になり、SE/30の後継機種だとも言われていたため、迷うことになりました。
今から考えれば、拡張スロットの有無やメモリスロットの数(最大メモリー量)で、絶対にSE/30が有利だとわかりそうなものですが、当時はまだそこまで見極められませんでした。それに、パソコンの技術革新のスピードなどについてもわかっていなかったのです。価格がまだSE/30の方が高めだったことも迷わせた一因でした。そんな状態のまま、プローズに向かったのでした。