漢方薬は健康を維持するために、東洋医学の知恵が活かされています。経験豊富な中医師が漢方の知恵を生かして、あなたの「自然治癒力」を引き出すお手伝いをさせて頂きます。慢性病でお悩みの方、是非コンドウ薬局にご相談下さい。当店は体質に合った漢方薬をオーダーメイドで調合致します。
 日本中医学院卒業 北京・広州中医学院留学 日本自然療法学会会員 日本薬膳振興協会会員 八面蒙色研究会講師
清水寺管長、松本大圓氏揮毫 薬食同源。健康の維持には食生活が大事と説いています。
 
睡眠と休養  睡眠の時間  季節による睡眠の時間帯
睡眠と休養

 最高の休養は睡眠をとることです。睡眠には、睡眠のとりかた、時間数、時間帯があります。まず、睡眠方法ですが、板の間のような硬いものの上に寝ることがよいとされています。しかし、体の下側に面する背中、尻などの一部にだけ体重がかかると、そこだけが血液の循環が悪くなるのでよくない。あまり軟らかくフワフワしたものの上でも、背中が曲がってよくない。その中間の、下側面に当たる体の部分全体に体重がかかり、なおかつ背中が曲がらない程度の硬さがよいのです。

 電気毛布やシーツは、肺肝腎機能に変調が生じるので、なるべく避けたほうがよく、昔から頭寒足熱といいましが、足先を暖めるアンカ程度のものがよい。寒くてどうしても眠れない場合は、体をしめつけないものを厚着するとよい。夜半の二時ごろからは体温と気温が急に低下するので、夏は寝冷えに注意しなければならない。夜休むときの体温を気温に合わせて寝ると、夜半の冷え込みにやられる。

古人は、この時間を鬼門の刻といって恐れていた。この冷えを一度や二度体内に引き込んでも平気だが、積み重ねると病気の原因となるのです。とくに夏の寝冷えが危険で、体の奥深いところまで入って内が傷つきます。

 病気は、たいがい素因と素因が重なり合って原因をつくり、また原因が積み重なって誘発しやすくし、ついに誘因に導火されて発症するのです。譬えば、娘時代から甘いものを好み、ケーキ、アイスクリーム、チョコレート、キャンデー、ジュースなどを感情のおもむくままに飲食して、腎機能を極度に低下させる生活をしてきた新妻がいたら、まだ若いので、何となく根気が出ない、肩がこる程度で発病に至らなかった。

 結婚後、夫婦生活に入ると、夜、腎力を消耗したうえ、布団からはだけて、すっかり寝冷えしてしまった。腎が弱って喉が乾くのと、熱いために、昼夜かまわず冷たいものを過飲する。くる日もくる日もこの生活を繰り返す。このような悪い素因を積み重ねてくると、その先天によっては、不妊になったり、流産したり、生まれてくる子どもが虚弱であったり、最悪の場合は小児マヒになったりすることがあります。

 一般的には、このような素因が積み重なって発症したとは考えない。ポリオはビールスのせいで、不妊は種がないせいで、子どもの虚弱は先天性であると、みな自分以外の責任と考える。しかし実際は、みな自分のつくった素因の積み重ねが原因となっているのです。

 冬の場合は、寝冷えすることはないが、肺から寒さを感じて熟睡できない。寝が足りないので風邪をひきやすい。そのうえ、冷気に内傷されたりすると、筋肉が硬直して、その人の欠点の筋組織に病気が出てくる。譬えば、肩こり、背部痛、腰痛、関節炎、神経痛、めまい、自律神経失調、膀胱炎、婦人病などが発症しやすくなる。いずれにしても、複雑な生活と複雑に成り立っている人体なので、気がつかない意外なところで、病気の素因、病因をつくっていることが多いのです。


睡眠時間数

 幼児は猛烈な発育期で、起きている時間より眠っている時間のほうが長い。成長するにつれ睡眠時間が短くなり、成人になると8時間で間に合う。中年以降は6~7時間で足り、老年では5~6時間で過ごせる。老年は体が冷えやすいので、熟睡ができにくく、すぐ目が醒めるが、日中の気温上昇時に眠けをもよおしよく居眠りする。

 睡眠時間は、だいたい8時間が標準となっていますが、その人の体質によっても、年齢によっても異なります。正しい時間帯の内に正しい生活をしてから眠り、すっきり目がさめるまで寝るのが、その人に合った完全時間数であるかも知れないが、すべて、太陽とともに起居するという時間内で、休息と睡眠をとることが、自然法則に従った正しい時間数です。過食すると眠くなり、睡眠時間を多くとらないと体がもたない。

・暖かいなかで、じっと体を動かさない姿勢でいつまでもいると眠くなる。
・三六・五度を少し上まわる保温状態でいると寝すごす。
・夜食して寝ると、胃腸が働いて、副交感神経が完全に働けず、たえずウトウトして熟睡できないで、よく夢をみる。
・午前二時ごろから体温と外気温が下がるので、寝室が寒いと、寒気が肺呼吸を冷やし、内外の寒冷によって安眠できなくなる。
・体温の高い人はよく眠れるが、恒温を越す熱さになると、逆に体温冷却の交感神経が働いて眠れなくなる。どうしても寝られないのは、交感神が働いているからである。副交 感神経を働かせるように、伏臥すま二十分以内に眠るもし伏臥が不可能ならば、右下の横臥でもよい。


一日の睡眠時間帯

 正しい睡眠時間滞は、午後9時から午前3時を中心とした時間ですが余勢が働くので、1時間ずつずれた夜10時から朝4時の間です。四季によっても多少異なりますが、大体この時間帯に熟睡することが望ましい。

 寝た状態は、腎機能が十分に働ける姿勢であり睡眠することは、心が休息でき、腎が完全に働ける状態です。すなわち、睡眠は、完全休息ができるのです。要するに、腎の働く時間帯が睡眠の時間帯ということです。次に腎が働く一日の時間帯を示してみよう。

 腎の働く一日の時間帯は、午後3時から発動し、亥の刻の9時から積極的に働き始め、子の刻の11~1時には、完全に大地の地気に結ばれて根(寝)つくといわれる。終わる三時までに熟睡し、次の4~5時には肝系が働くので寝ながら体内では起立の準備をする。

 完全睡眠は、夜10時から朝四時が最適で、4時以降は起立準備のため、体内では半眠状態となり、体にとって完全休息とならないのです。もし、この時間帯に逆らった生活をすれば、8時間以上睡眠をとっても完全に休まらないので、病気の素因となります。

 たとえば夜12時ごろ寝て、朝8時頃起きれば8時間睡眠がとれるが、2時間が自然に逆らっているので、この分だけ寝不足となる。そして、腎心の機能が低下し、毎日積み重ねれば、その人の体質の欠点に負担がかってついに発症することになります。


四季の睡眠時間帯

 四季における睡眠時間帯は、春・夏・秋は比較的早く寝て早起きし、晩秋・冬・早春は早寝して遅く起きるのが、自然法則に順応しています。

・春:夜九時に寝て、朝六時には起きる。
・夏:夜九時に寝て、朝五時に起き、昼寝を一時間する。
・秋:夜九時に寝て、朝六時に起きる。
・冬:夜八時までに寝て、朝七時すぎに起きる。

冬は長くゆっくり寝て、一年の大きな休息をとって、動的冬眠をすることが望ましい。



「解説」

睡眠のとり方

 ここでは睡眠のとり方について説明していこうと思います。睡眠とは大休養、一日中の大休止だといえます。農家の人たちは10時ごろと3時ごろのいわゆる「土用の時間帯」に休養をとりますが、これは要するに「間」です。「間」の一番大きいものが睡眠といえましょう。睡眠のとり方は、休養のとり方と換言してもよいと思います。

 睡眠の方法は、畳の上に布団を敷いて寝る場合が多く、最近の若い人たちはベッドというケースもあります。畳の上の場合、スポンジ(マットレス)を敷き、その上に敷布団を敷くのが普通ですが、あまりフワフワした状態は、脊柱が曲がってしまうので体によくありません。

 硬い上に寝たほうが、背中の肩甲骨のところと、腸骨のところが水平に床にあたり、胸椎と腰椎は腹部に彎曲して正常な姿勢を保ちます。敷布団がフワフワしているとこれが異常に曲がってしまいます。ハンモックなどは、もっともよくない例です。

 しかし幾ら硬い方がよいといっても、あまり硬すぎると体が曲がらず痛くなって、考えものです。厚いベニヤ板の上に毛布を敷いて患者を寝かせる方法がありますが、この方法ですと、ちょっと硬すぎるのではないかと思います。中庸がよいのです。一般的に、スポンジ(マットレス)なしの、少し厚めの敷布団一枚というのが理想だと思います。

 電気毛布は、体の弱い人や、敏感な人には寝苦しくなります。ことに、肺の弱い人は「火剋金現象」が起こるので嫌うのです。自分の体温を保温してそれで暖かいと云うのが自然です。それを人工的に暖めるため、体表の気の行りが熱によって亢進され、自分の体温を保温する状態ではなくなってしまうのです。

 皮膚の毛穴が開いて、中に保温すべき状態が外に発散してしまいます。夜は、保温状態、つまり「水性原理」が働く時間帯です。「水性原理の働き」とは、冬の大地が表面を収縮し、地中に内燃するような求心性の働きで内燃力を高める働きです。従って、寒い時とか、冬は体表(理)を固め保温しなければならないのに、逆に電気毛布の加熱によって、体表を開いて遠心的な生理が働いて内燃せず、発散させてしまうのです。

 火剋金現象も、肺金は秋の冷気が一番働きやすいのに、加熱(陽遁の気)によって剋されてしまう。収斂しようとする肺に対して、木、火の加熱の働きに開かれてしまうので、熟唾できなくなるのです。一時はホカホカと暖かくて良い気持ちですが、長く続けているとよくありません。陽遁の気が働いているので、心、肝が働いてぐっすり眠れなくなってしまうのです。

 一概には云えないが、体の弱い、特に肺の弱い人は、金気に力がないので、少しの暖かさでも「火剋金」となるのです。体力の落ちている人は、電気毛布は反って良くない状態を起こします。元気な者のでも、影響を受けているが感じないのです。しかし長い間には悪い結果がでてくるのです。

 有効的な暖め方は「頭寒足熱」の方程式にのっとり、足先を暖めるのが一番よいのです。足先を暖めることによって、頭のほうが冷えてきます。夜、ストーブをつけたまま寝るのは、頭を暖めてしまうのでよくありません。電気毛布よりももっと悪い条件となってしまいます。そうかと云って、部屋が寒くて布団を何枚も重ねなければならない状態もよくありません。鼻から冷たい空気が肺に入っても、肺力があればよいのですが、力がないと寒けを生じて、風邪などをひきやすくなります。

 室内温度や、電気毛布のコントロールをきちんとしないと、肝・心系が働き、自律神経失調のような状態になってきて、熟睡ができなくなってしまうのです。この原理は、夜寝る前に、濃い緑茶とかコーヒーを飲むと、腎系・肺系の弱い人は寝られなくなります。苦味類は心を活性化するもので、心が休むべき時間帯に働いてしまい(交感神経が働いて)半睡状態となってしまうのです。

 夜、コーヒーを飲んでも平気だという人もあります。しかし、それは自分で感じていないだけで、身体には障害は生じていると思います。これをずっと続けていると、いずれ自律神経失調になるか、または自分の欠点に病気が現れます。真理方程式でいけば、心が弱ければ心の病、肺が弱ければ肺の病、とくに夜過飲すると腎がやられます。夜、心に働かれると腎の働きが乱れてしまうからです(なお、参考までに室内温度の適温は十八度といわれています)。

 寝具は色々ありますが、その主なものに「枕」があります。高い枕をしている人がいますが、昔から安眠することを「高枕」といいます。「高枕」をすると、首の血管が少し圧迫されて、頭の血のめぐりが少し鈍くなって睡眠できるのでしょうか。

 眠れないときに「俯せになるとよく眠れる」と云いますが、これは、俯せになることによって副交感神経が働き出すためです。しかし、肺の弱い人は胸が圧迫されてよくありませんので、そんな人は横臥位がよく、それでも辛い人は首だけを横にして頸動脈のところを少し圧迫してやると、頭部へ行く血液が減るので、眠れるようになります。

 そのほか、病的に眠れない場合は、「梁丘」とか「三里」に鍼がよいといわれています。つまり土性の経絡を調整してみることです。土性は偏りを水平にする、中庸コントロール作用があるからです。眠れないからといって睡眠薬を飲むのは、最悪の方法です。

 夜半の二時ごろから、気温もぐっと冷え、体温も下がってくると云われています。東洋医学の考えでは、夜は運動量が減るので、体温の発熱量(基礎代謝)も下がるとしています。外表温度は、二十四時間ほぼ同じ温度に保温されますが、体内温度は終始変化しています。将来科学が発達したら、腎臓の温度とか、心臓の温度が別々に計れる(サーモグラフィーの進化)ように成ると思われるが、そうなれば病気というものがハッキリしてくると思います。
 
 大体、温度の下がっている部分が機能低下しているのです。内部が発熱しているのは分かりますが、温度が低下しているのは分かり難いものです。夜は発熱量が一定温度まで下がるので布団をかけて暖めるわけです。そして、体を上下に分けて、陰の部位である腰・足部を保温する方法を取るのです。

 夏の寝冷えですが、これは冷えが深いところに入るので最高に危険です。夏は薄着になり、暑いからと窓をあけたり、クーラーをつけたりして、すべて開くという状態(人体の場合は毛穴を開く)になり、冷えやすい状況をつくります。その時に冷えが入ると、深部まで入ってしまうのです。また夏は、昼間冷たいものを飲み、内臓が冷えています。

 冷え過ぎた場合には体内では暖めようとします。とくに夜はこの働きを盛んにし、ホルモン作用で暖めようとします。そのために煩熱状態になります。内側は冷てているが、外側(表皮)が暑くなると、全身が暑くなったように感じます。体の内部が冷えていればいるほど、煩熱によって外表が暑く感じられるのです。体の内部が熱くて外表が暑い場合もありますが、これはごく少ない例で、体の丈夫な心旺タイプの人のみにみられます。

 普通のタイプの人は表皮が暑く感じるのは、体の深部が冷え込んで寒いのです。これを称して「煩熱」といいます。昼間冷やすと夜「煩熱」となって現れてくるのです。この状態は、昼間でも、冷たいものを次々に飲にでいると起こります。暑いときに冷たいものを飲にでいると、いくら飲んでもまた欲しい状態になりますが、これは「煩熱」によって咽が乾くからです。冷たいものを飲んだ後に暑くならない人は、相当に心臓の強い人といえます。反対に冷たいものを飲んで、カーッと発汗するような人は、内部が冷えているのです。

 この「煩熱」は体が弱ければ弱いほど即座には起こらないで、夜になって起こるのです。夜、咳こむとか、病気が発症する場合、とくに咳こむ場合は、必ず昼間冷たいものや冷えるものを口にしているといえます。ですから昼間やったことが、夜症状となって現れますし、夜きちんと唾眠をとっていなければ、昼間眠くなるのです。よく「冬やったことが夏にでて、夏やったことが冬にでる」といわれていますが、それと同じです。

 一年でも、冬は表皮がひき締まっているので、外側から冷えが入ることはあまりりません。これに反して、夏は毛穴も開いていますので、冷えが入りやすいわけです。こういう原理を知らないで不摂生をしている人が大勢います。私の知人で、骨(関節)が痛いという人がいました。その人は、氷の入った冷たい水が大好きで、毎日のように飲んでいたのですが、三年ほどでリューマチになってしまいました。

 だいたい腎系の病気、譬えば、糖尿病、リューマチにかかる人は、冷たいもの、冷えるものが好きです。これは内側を冷やしているために「煩熱」が起こって表面が暑くなるのです。つまり、内部を暖めようとして、一過性に、体内でストーブを焚くような状態にするので、暑い熱は表面にでてきてしまうのです。とくに首から上は熱くなり、脳はいちばん熱くなります。それが高ずると頭痛になり、ズキズキ痛みを発します。

 喘息の場合も同じで大体水物を好みます。要するに「暑くなる→冷やす」、いう条件が一番よくなく、「夏、冷やす」と同じ条件です。体内で煩熱が起き、冷たい水を飲むのがもっとも悪いといっているのです。

 体があまり丈夫でなくて、冷たいものが好きな人は、「煩熱」で口渇が起こっているというこを知っておいてください。本当に丈夫な人はあまり冷たいもの、冷えるものを摂りません。睡眠中に暑すぎて病気になることは殆どなく、たいていは冷えて調子が悪くなる人が多いのです。


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