おっぱいの自然卒業

通常、授乳中のお母さん方は、10ヶ月頃から1才のお誕生日を迎える頃になると、そろそろおっぱいを止めよう、断乳しようと思うようになるようです。

そして一般に、おっぱいを止める方法として、断乳卒乳があります。
断乳とは::、お母さん側からの理由や都合で、無理矢理におっぱいを止める方法です。従って断乳する時期や理由についてみると、赤ちゃんに歯が生えてきたので噛まれて痛い、栄養的にミルクと変わらなくなった、何時までも与えると甘え癖がつくというような所のようです。
一方最近では自然卒乳という考えが定着してきました。卒乳とは赤ちゃんが自ら母乳を止める時を決めます。国際母乳連盟はこの自然卒乳を推奨していますし、私たちの日本母乳の会もその線に沿った考えをしています。赤ちゃんが自立して行けば、自然にお母さんのおっぱいから離れて行きますよというのです。決して放任とは違います。だらだらと無意味に飲ませているのではありません。

ところで栄養的に母乳を見ますと、6ヵ月から9ヶ月にかけてが断乳の時期といわれます。つまり栄養的に人工乳や離乳食と差が無くなる時期であり、母乳以外の食べ物からの栄養も必要となってくる時期なのです。

しかし確かに1才を過ぎる頃からは、おっぱいが無くても離乳食やミルクだけで、栄養的には十分足りています。しかし赤ちゃんの心身の発育には、食べ物からの栄養素のほかに、いつも安定した心でいられる心の栄養素が必要なのです。其の心の栄養素こそお母さんの乳房からのおっぱいに加えての、お母さんの懐の温かさと肌のぬくもりであり、心安らぐお母さんの匂いであり、御母さんのオッパイの味で、これこそが、おっぱいに加えて赤ちゃんの心を安定させてくれるのです。1才を過ぎるとおっぱいは赤ちゃんの心の安定に役立つ精神安定剤となるのです。

この頃からお母さんの懐は、赤ちゃんの心のベースキャンプ、心の安全基地へと変化します。赤ちゃんが寂しい時、悲しい時、つらい時、苦しい時、不快な時、不安な時、このような時に赤ちゃんの心を慰めてくれる役割を果たすのが、この時期のおっぱいなのです。赤ちゃんが自立することは、未知の世界に踏み出し、体験することです。其の過程には恐ろしいこと、不安なこと、勇気の要ること、苦しいことなど、様々な初めての体験をします。その時の赤ちゃんの心を慰め、励まし、安定させてくれるのがおっぱいであり、お母さんの懐なのです。赤ちゃんにとって絶対的な安全基地があるからこそ、赤ちゃんは安心して冒険心を満足させ、未知の世界を体験し、やがて自立への道を歩んで行くのです。子どもがスムースに自立して行くには、其れまでにお母さんとの心理的一体感の世界を体験し、母と子の絆、両者の基本的信頼感basic trustが醸成されていることが必要なのです。おっぱいを巡る母と子のこころの交流には、この様な大きな意味が含まれており、しかも、授乳という場は自然に、しかも理想的な形で母と子にその場を提供してくれます。

世間ではこの時期になるとおっぱいの質が低下?するとか、成分が悪くなるから断乳しなさいと指導する人もあるようですが、決してそのようなことはありません。確かに生後300日頃になると、母乳中の脂肪や蛋白質の量が僅かながらも低下しますが、これは質の低下ではなく、正しい離乳の必要性を示している現象なのです。

”でもいつまでもおっぱいを飲ませていると自立心の無い子の育つといわれました。昼間は全く飲みませんが、夜眠る時だけです。それでも止めねばなりませんか”
この質問は、私たち日本母乳の会の運営委員が共同して作った「母乳育児・なんでも Q& A」婦人生活社発行の中に、掲載されている或るお母さんの悩みです。其れに対する回答をここに引用しましょう。
”「自立心がなくなる」・・・こういう言葉はお母さんがたをドッキリさせます。子育てでお母さんたちを一番不安にするのは、何かあった時、このままの状態から先へいけるかどうか分からないということです。このままずっと甘えん坊になるのではないか。おねしょうにしても、ずっとおねしょうをしているのではないだろうかと・・・。赤ちゃんが成長していることが分かっていてもつい不安になってしまうのです。此の方もそうです。今、お母さんのおっぱいを飲んでいるように、甘えん坊のまま・・・という心配でしょう。安心してください。小さい時に、御母さんに抱っこされ、充分に甘えて育った赤ちゃんほど、自立心が強くなるのです。これは国際母乳連盟(ラ・レーチェ・リーグ)の調査でもはっきりしています。寧ろこのオッパイ子達には、独立心のある人間に育っているという共通点があったということです。」”

日本母乳の会の南部春生先生は、母乳の栄養学的断乳は9ヶ月、心理学的卒乳は2〜3才であり、断乳よりは自然卒乳を指導しておられます。

しかし多くのお母さんの中には、どうしても少し早くオッパイを卒業させねばならなくなる方もあるかと思います。その際お母さんが心がけるべき事、少しお手伝いするとスムースに卒乳できる方法があります。以下オッパイ博士で知られた故山内先生が、「初めての母乳育児と心配事解決集」婦人生活社発刊に紹介してある卒乳のコツをお知らせしましょう。

心を鬼にして止めるのはよいことではありません

赤ちゃんと充分に話し合いをしましょう

おっぱいを飲ませた後、赤ちゃんの心が満たされている時に話を:

必死に言い聞かせて、止めさせようとするのは逆効果

オッパイの止め方は、いろいろあって当たり前ですが、自然な形が一番です。一気に止めないと駄目というのは、母子双方に無理を強いることだと思います。1才を過ぎればお母さんの話は分かりますから、丁寧にお話して、赤ちゃんが自然に離れて行くのを待ちましょう。もし、うまくいかない時は、「赤ちゃんにはオッパイが必要なのだ」と理解して、もうしばらく母乳育児を楽しんで見られたらどうでしょうか。

お母さんのオッパイの手当て:オッパイが張ってきますので、手で搾っておきます。


甘えっ子になったり、自立心の無い子どもに育つという心配

オッパイを卒業したとしても、時には、オッパイは心の安定剤

補足:多くのお母さんからの質問には、卒乳に関しての問いが多く、然も、先輩からの体験記とか、卒乳についての記事の掲載されている本の紹介を希望されているお母さんが多く見受けられます。そこで卒乳についての記事、更にはそのような考えを生み出した母乳育児について記載されている本の紹介をしたいと思います。


「母乳育児なんでもQ&A」・婦人生活家庭シリーズ・¥1250・婦人生活社
「続オッパイだより集」母乳で育てたいままへ・母乳育児サークル編・メディカ出版・¥1900」
「誰でも出来る母乳育児」ラ・レーチェ・リーグ・メディカ出版・¥2100」


それからこの卒乳の欄の最初の方にタンデム授乳中の母と子の写真があります。この写真の主人公についてのご質問もありました。この写真中のお兄ちゃんは、母親の入院中は保育園が退けるや否や産院に一直線。そしてこの写真のような次第でした。しかしお母さんの話しでは、退院してまもなく、自然にオッパイヲ見向きもしなくなったとのことです。尚、タンデムとは二人漕ぎの自転車のことです。