H ヒューマン方式とブロイラー方式

子ども権利条約が国会で承認されてより、赤ちゃんが法の立場より「権利行使の主体」として人権が認められただけでなく、母乳を哺乳する事は新生児・乳児にとって基本的な権利として認められましたが、最近の医学は、単なる植物人間ではなく、実に素晴らしい能力の持ち主である事を明らかにしており、我々成人と同等の仲間としての取り扱いが求められる様になりました。そしてお互いの間で交流の出来る出生直後からの母子同室は、母と子の共生リズムの同調を容易にしてくれるだけでなく、南部春生博士が推奨されている赤ちゃんの「健康な生活リズム」の確立へと繋がるものであり、その後の健康を約束してくれる最初の母と子のかかわりあいであります。

又出生直後からの母と子の同室は、幾重にも張り巡らされている対細菌・ウイルス防御バリアーを最も効率的に発揮させるだけでなく、生れてはじめて赤ちゃんを抱くお母さん達に促成ではありますが、必要最低限の育児のノウハウを伝授してくれ、マタニティーブルーの防止にも役立ちます。更にこのようにして確立された母乳育児はサイレントベビーの防止と治療に有効であるだけでなく、可愛いはずなのに愛せないと悲嘆に暮れているヤングママの予防にも大いに役立っています。

このように眺めてきますと、ややともすれば人間関係が希薄になり易く、成立しにくい現代社会であればこそ、十ヶ条方式の母子同室制によって成立した母乳育児は、次代を担う我々の赤ちゃんにとって最善の人生のスタートとなるものであり、此れこそヒューマン方式の新生児養育法と言えるのではないでしょうか。

一方、出生直後から母と子を分離させ、集団雑居房ともいえる新生児室に隔離収容して、人工乳を時間を定めてたっぷりと与えることにより、とりあえず肉体の発育を図ろうとする新生児管理法は、そのシステムのあり方から考えると、敢えてブロイラー方式と称しても差し支えないと思います。そして貴重な育児のハウツー習熟のためのゴールデンタイムである出産後の一週間を無駄に過ごさせるこの方式は、お叱りを承知の上で、敢えて極論すれば養育法というより飼育法といった方が適切な表現であり、ヒトの子のブロイラー化といっても差し支えないと思います。どうも我々産科医は此れ迄心の存在を忘れて、人間の赤ちゃんをややともすれば病気にさえならなければ良い、体重がどんどん増えればそれで良いと、ブロイラー扱いし過ぎたようです。

以上を総括しますと、母子同室・異室制に関しては、最早その優劣を比較する段階にはないこと、そして母と子は出生直後から一つの単位であり、不可分の存在である事が理解されます。


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