I 出生早期の凝縮された数日間

産後1週間の入院中、母と子は毎日当然のことながら24時間を共にして交流した結果、早くも赤ちゃんは自分の母親を認識するようになり、母親もまた赤ちゃんとの共生生活を通じて、あたかも乳汁来潮現象と軌をいつにして急激な母性の成熟をみます。出産前日までは、あれほどムスメムスメしていた妊婦が、この一週間で母親として急激な変貌を遂げるのです。しかし、当初より完全母子同室・母乳主義だった私は、この現象は産後我が子と接するうちに母親に生じる当たり前というか当然の変化だと思っていました。ところがこの現象は誰にでも起こるという変化ではないようです。この現象が起こるには母子同室制と母子異室制との間に大きな差が指摘されています。母子異室制から母子同室制に移行した経験を有する先生方によってそのことが指摘され又、母と子の間に起こるこの劇的ともいえる変化の数日間を「出生早期の凝縮された数日間」と名づけられました。

国立大学付属病院でありながら、数年前より母乳育児10ヶ条を完全実施している長崎大学の福田博士は、産後1週間の入院中に母子同室によって母親に生じる急激な変化に驚き、母子同室の意義を「出生早期の凝縮された数日間」と表現して、次のように述べておられます。

「臨床の場で実際に出生早期より母親と赤ちゃんを一緒にすると、生後1週間で愕くほど変わってゆく。特に出生早期の数日間は女性が母親となっていくための、そして、子どもがこの人は自分の最も信頼できる人だと認識するための、自然から授かった、まさに「凝縮された数日間」だと思われる。

最初の2、3日は頻回授乳と抱っこの連続で殆ど睡眠不足になるが、生後3、4日になると急に母乳の分泌量が増え、母親は今まで授乳させても眠らなかった赤ちゃんが、徐々に眠り始める事により、安堵感と乗り切った事への自信が見られはじめ、授乳する事が楽しみに変わってゆくように感じられる。この時期になると母と子の生活リズムは殆ど同じになっている。以前の母子異室の体制では母と子がそれほど変わってゆく事など、予想もできなかった事である。

分娩直後の母と子の出会いから、生後たった数日間ではあるが濃厚なスキンシップで築かれた母と子の関係が、一ヶ月検診時にも同じように観察される。特に母親が子どもの欲求を喜びとして受け入れる姿勢は、育児を楽しみ、子どもに接する時の態度や気持に余裕が感じられる。そして1ヶ月までに築かれている母子関係が、その後の育児の基礎となる事は当然と感じられる。だからこそ出生早期からの母と子の出会いを大切にする必要があると思われる。」


この地球上に、二つの餓えた地域がある

一つはアフリカ。もう一つは日本。

アフリカは物質的な餓え。日本は精神的な餓え。

マザー・テレサ


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