出生直後より、人類を除く全ての哺乳動物は例外なく同床・同禽です。例えば生まれると直ちに母と子を別々の場所に引き離し、一定の時間(その臨界期はそれぞれの種族によって異なりますが)離れ離れにした後、再び親子を一緒にしても、最早母親は我が子とは認めず、決して養育しようとしないだけでなく、時には食い殺してしまいます。
例えば山羊の場合、生後3時間以内に親と離して、再び一緒にした場合、親山羊は子山羊を殺してしまうといいます。しかし生後2日間親と一緒に過ごさせ、その後離した子山羊を再び親のもとにかえした場合、親山羊は子山羊を受け入れます。この事は山羊の場合、生後二日間で親子関係が成立したことを示しています。
このように Ethology(動物行動学)の立場からすると、人類以外の哺乳動物では、出生直後の母子分離は自然の掟に反する行為のようです。一人人類のみが、この哺乳動物の掟から例外であり得るのでしょうか。
確かに人類の子どもの場合、親に対して抱く愛着の確立は時間的に長く、1〜2年(乳幼児期全般)といわれます。しかし母親にとっての感受期は、分娩直後の比較的限られた時間が重要のようです。例:未熟児の母親の場合
しかし戦後 GHQの指導のもとに、母子異室制という新生児管理システムが普及しました。時は流れ、医学の進歩や生活レベルの向上と共に、赤ちゃんは死ななくなりましたが、赤ちゃんは生れると即座に儀礼的な母親との対面を終えるやいなや、新生児室という名の集団雑居房に母親から隔離・収容され、然もインフォームドコンセントは殆どなされないまま、一方的に人工乳が与えられるという、一見近代風な新生児管理システムが、当然の医療行為であるかのように、定着してしまったのが現代の我が国です。
この母子分離に関連して、次のような現象が証明されています。
ラットでは母と子の相互作用を断ち、母子分離が長期間にわたると、成長と行動の発達に著しい遅れが生じます。その原因として、ラットや人類により近い赤毛猿の新生児を母親から分離すると、成長ホルモンの分泌が低下し、再び親の懐に返すと速やかに回復する事実、更に分離が続くと、成長ホルモンの働きを受けてその作用を発揮する受容体(receptor)迄が働きを止めてしまうという生理学的現象が証明されています。
更に、発達生物学的裏付けとして、脳・肝・腎などの全身の臓器組織において、ポリアミン(成長、機能発達・分化、蛋白合成、核酸合成を促す極めて重要な酵素)の生合成の律速酵素であるオルニチン脱炭酸酵素は成長ホルモンに支配されており、母子分離によりその活性が敏感に低下する事も証明されています。(「第2回母乳をすすめるための産科医と小児科医の会」記録集より)
これらの事実は動物や動物実験の場合に見られるだけではありません。人間の場合でも同様な事が臨床的事実として知られています。例えば孤児院などで母子の分離や愛情・スキンシップの不足が生じた場合、乳幼児の身体や心の発育が実際に阻害されてしまう現実の問題としてよく知られています。
このように自然は、母と子は常に不分離・不可分の存在である事を求めています。