はじめに
98年、ダイオキシン関連の本がぞくぞく出版され始め、又新聞紙上にダイオキシンの文字の見られぬ日のない4月下旬、産後2ヶ月目、母乳で育児中というあるお母さんから次のような電子メールを頂きました。
「「ダイオキシンと母乳」と言う記事を読ませて頂きましたが、私の不安は消えませんでした。と言うのも、母乳の安全性についての根拠が文面からは伺えなかったからです。母乳が如何に赤ちゃんに良いかは、「赤ちゃんがみんなミルクで育てられたら」でよく分かりましたが、栄養と一緒に猛毒が入っていては、何の意味もありません。本当にこんな小さな身体に許容量以上のダイオキシンを与えつづけても大丈夫でしょうか。毎日直面している切実な問題として、この授乳はどうなのかと言うことを教えて頂きたいのです。それに対して納得のいく説明をしているのは、今のところ、マスコミのほうが優勢だと思わざるをえません。安全であると言う言葉、もしくはそれに値するくらいの安全性の根拠が示されない限り、授乳を短い期間で切り替えると言う自衛策をとる事になりそうです・・・。(本当に悲しいことですが・・・)」
事実、この文面の通り、本年の4月頃まで、この様なお母さんの不安や悩みに答えた医療者サイドからのアドバイスや解説は、先に紹介した橋本・本郷両者による「ダイオキシンと母乳」以外には皆無(恐らく)であり、小生の記した「赤ちゃんがみんなミルクで育てられたら」も、母乳は危険だから直ちにミルクに代えなさいとする環境汚染キャンペーン家に対しての回答であり、母乳の安全性に関しては全く触れてはいませんでした。
当時はこの様な情勢下にあった、つまり、データを交えて科学的にダイオキシンと其の被害について見解を述べようにも、其の根拠となすに足るデータが皆無と言って良く、母親から今医療関係者の言っていることは、「目の前で家に火が燃え移ろうとしている人に、そもそも火事を起こしたのは三軒隣の家の息子のたばこの火の不始末だ」と言っているようなものだと皮肉られても、医学的に反論するだけのデータの入手が不可能であった、いや発表されたデータが存在さえしなかった時代なのでした。
ところが、5月の連休が明けた頃より、不十分とは言え、渇望していた母乳とダイオキシン関連の測定データが漸次入手可能となり、ダイオキシンによる健康被害についての検討に、産科医療の第一線に携わる私たち臨床家にも参加が可能となってきました。
そのような状況下、現在迄に得られている主なデータを簡記すると、以下のようです。
ダイオキシン・シンドローム : 上記の様な数字を根拠にして母乳のダイオキシン汚染の現状をお母さん達にお話しし、次いで其のダイオキシンの体内への侵入を防ぐための手段、特に最大の侵入路である食事、特にダイオキシンの汚染度から見た食品の種類や献立について具体的に話しをすると、多くのお母さん達は納得し安心して母乳育児に進まれるようです。ところが近頃この様な説明だけでは充分に納得しきれないお母さん達が現れて来ました。頭では、つまり、理屈では先生の話を聞いて大丈夫だろうと理解できるのですが、毎日のように新聞や雑誌や本に”史上最高の毒物”とか、”母乳が最も汚染”とか、”生殖機能とか免疫機能に大きなダメージ”等と書き立てられているのを見るにつけ、更に僅かとは言えこの私のおっぱいの中にも其の猛毒が入っているかという思い、そして、わが子と私の身体の間で猛毒が入れ替わっているのだ、などという思いなどが湧いてきて、とても安心して、いや楽しみながらわが子におっぱいを飲ませようという気にはなれず、ミルクに替えようかと悩んでしまいますと、悩みの日々を訴えるお母さん達が現れてきました。この章の最初に紹介した悩め るお母さんの訴えはそのよい例です(但しこの時点では、未だ納得すべきデータもまた入手不可能でしたが)。この様な訴えをするお母さん達の現象をダイオキシン・シンドロームとでもいったら良いのでしょうか。故山本七平氏の言葉を借りるまでもなく、日本人は空気の民族、つまり空気・・・雰囲気という目に見えないものに容易に支配され流されてしまう民族です。ダイオキシン=猛毒と、あれほど繰り返されて耳や目に入っているうちに、何時のまにやらダイオキシンと言う目に見えない言葉に呪縛されてしまったお母さん、ダイオキシンと言う言葉の呪縛から逃れられないお母さん、そして母乳育児を楽しみたい、安心して母乳を与えたいと思っても、しかし頭の片隅からダイオキシンの影がどうしても離れないと言うお母さん達です。
しかし最近になり、此れ迄ダイオキシンによる健康被害の決定的証拠として私たちに突きつけられていたデータや考え方を否定的する、或は懐疑的・批判的なデータや論説が漸く現れて来るようになりました。そこで本編では、それらの幾つかを取り上げ、ダイオキシン=原因とする肯定派と、そうではないと否定する人の立場から、それぞれの言い分を紹介し、其のデータの真偽や妥当性について検討することにより、可能な限り各自が正確な判断が出来るように努め、少しでもダイオキシンシンドロームの母さん方の不安を和らげたいと思います。
子宮内膜症を簡単に説明しますと、本来、子宮の内腔の表面を覆っている子宮内膜組織に形態的に類似した組織が、子宮以外の部位、例えば腹腔内の表面で発生・発育し、月経困難症や性交痛・不妊症を生じる疾患を言います。
この子宮内膜症とダイオキシンの関係が急にクローズアップされたのは、ごく最近のことで、Rier
氏らが、微量のダイオキシンを赤毛サルに投与して子宮内膜症を発生させた実験が紹介されてからのことです。彼女らは赤毛サルに4年間に亘ってダイオキシンを投与し、その後10年間に亘って経過を観察しました。その結果、無投与群、連日5ppt投与群、25ppt投与群では、夫々2/6(33%),3/7(43%),5/7(71%)の割合で、子宮内膜症の発生を見ました。尚、25ppt群では実験の途中で3匹が子宮内膜症で死んでいます。この様に微量のダイオキシンの長期間投与により、人に近いとされるサルに子宮内膜症の発生を見たことから、今日増加の一途をたどっている子宮内膜症の大きな発生原因としてダイオキシンが一挙に注目を浴びるようになりました。
尚、このダイオキシンが子宮内膜症を発症させる仕組みについては、ダイオキシン類が女性ホルモンの受容体のシステムに変化を及ぼすホルモン撹乱作用と、もう一つは、免疫システムの中で指令塔の役目を果たすことにより生体防御を担っているTリンパ球の機能を低下させると言う説があります。
この実験に用いたサルの数の少なさや人の子宮内膜症との比較の妥当性に問題を残しながらも、この実験データからダイオキシンをこの子宮内膜症の大きな発生原因と考え、主張している人たちは、次の方達であり、其の著書を紹介しますと、
以上の著者達は、子宮内膜症の発生原因としてダイオキシンの積極的な関与を認め、子宮内膜症の発症の大きな或は決定的因子として、ダイオキシンの果たす役割を認めています。
次にダイオキシンと子宮内膜症の関係を可能性の問題として捉えている、つまり、推論に過ぎない、関与の疑いあり、或は関与の可能性が強くなったと、このように指摘しいる方達には、
以上のように、サルの実験結果とヒトの子宮内膜症の増加と言う疫学結果とが結びついて、ダイオキシンのような環境ホルモンが子宮内膜症の原因となっているのではと言うストーリーになったのですが、この第2のグループの方達は子宮内膜症の発症原因としてのダイオキシン関与の可能性は、現在では未だ可能性の問題として考えておられます。
尚、其の子宮内膜症の増加傾向については、平成9年度における厚生省の研究班の調査結果では、少なくとも12万人以上の女性が子宮内膜症のために治療を受けていることが確認されています。
さて、此れ迄,ダイオキシンと子宮内膜症との関係についての論説は、殆ど医療関係者以外の方達によって論じられてきたことは皆様もお気づきのことだと思います。したがって其の内容も素人談義の域をでないきらいがありました。ところが本年の5月に至り、漸く医療者、しかも日本の産婦人科を代表する東大産科婦人科学教室武谷教授によって、この両者の関係に医療者の立場からの解析のメスがいれられました。其の内容は大方の予想を覆すもので、子宮内膜症の発生原因として、ダイオキシンの関与を殆ど否定するものでした。
「先ず過去20〜30年間に増加の一途を辿っている子宮内膜症(子宮腺筋症は除く)に触れた後、ダイオキシンと子宮内膜症の関係を決定付けた(?)Rier
SEらの仕事(既述)を紹介・・・。
しかしながら、ダイオキシンと同じ受容体(aryl hydrocarbon receptor)を介して作用するとされているPCB
compoundをRhesusサルに投与(6年間)したArnold DLらの研究では、寧ろ無処置群(6/16;37%)の方が投与群(16/64;25%)より、子宮内膜症の発生率が高い傾向にあり、しかも投与量と内膜症の進行度との関連も見られなかった。尚、この実験に用いたサルは80匹であり、Rierの4倍である。尚、サルを用いた研究ではこの二つの論文以外には、ダイオキシンと子宮内膜症の関連を見たものは現在のところ見当たらない」。
「次にサルの子宮内膜症の、人の子宮内膜症の病因解明のモデルとしての妥当性を論じた。下の表を参照ください。」
| ヒト | サル | |
| 自然発生頻度 | 多く推定して5〜10% | 約25〜35% |
| 発生のピーク | 30〜34才 | 生殖年齢の期間は3〜25才程度だが、11才過ぎより発生し、閉経に至るまで年齢と共に其の頻度は高くなる |
| 症状 | 月経困難症・下腹部痛・腰痛 | ヒトの症状に加えて、便秘・嘔吐・食欲低下・体重減少・腹部腫瘤の触知が高率に見られる |
| 発生部位 | 骨盤が中心 | 腸管にも比較的多発し、特に胃・小腸など上腹部にも好発 |
| 重症度 | 例外的に致命的 | 腸管の病変は時に致命的で、自然発症した子宮内膜症のの約30%が其の進行の結果死亡する |
「又、サルにおいてダイオキシンの投与は、生殖能の低下、流産、死産と関係することが知られており、Rierの実験においてもダイオキシン投与群では既述はないが、分娩回数も減少していることが考えられる。そしてダイオキシン投与の結果、分娩、妊娠の経験の無いことが子宮内膜症のリスクとなるので、仮にダイオキシンが子宮内膜症の発生に関わっていたとしても、生殖能の低下を介した間接的機序も否定できない。」
「マウスやラットを用いた動物実験モデルでは、
卵巣機能を保持した場合、ダイオキシンを投与されたマウスやラットでは、子宮の移植片が増大し、少なくとも子宮内膜の増殖に関しては促進的であった。但し、ダイオキシン投与動物では肝の腫大、胸腺の萎縮などが観察され、少なくともヒトにおける臨床像とは大きく異なる。又興味あることに、去勢したマウスでエストロゲンを投与し、子宮内膜症の発育を見ると、ダイオキシンを併用投与することにより、、寧ろ発育が抑制されていると言う報告もある。
以上により、マウスにおいてはダイオキシンの子宮内膜に対する増殖作用は、併存するエストロゲンの作用の程度により、促進的にも抑制的にも作用すると推測される。
更にマウス・ラットでは子宮内膜症の自然発生はなく、子宮の組織片を人為的に腹腔内に移植したものであり、子宮に対する薬剤の反応性を調べるモデルにはなるが、当該物質の子宮内膜症の発生の誘導能の検索に適しているのかとの疑問も持たれる。」
「ヒトにおいては、ダイオキシンと子宮内膜症との関係を取り扱った論文は極めて乏しい。Boydらは15名の子宮内膜症例で22種のダイオキシン、フラン及びPCB同族体について分析し、進行度とこれらの物質との濃度に関連を見出せなかった。一方、不妊女性において、子宮内膜症を有する44例中8例(18%)にて血中にダイオキシンが検出されたが、、子宮内膜症を伴わないと35例中1例(3%)であり、子宮内膜症例の方が検出率の方が高いという報告もある。これ以外には客観的評価に耐える観察はない。」
「以上、ヒト及び動物実験を通じてダイオキシンと子宮内膜症との因果関係を論じるには、余りにもデータが希少で、しかも一貫性に欠けていると言わざるを得ない。
ヒトの病因を考察するための適当なモデルの無いことが両者の関連性の解析を困難にしている一因である。従って現時点では結論の導出は無理ではあるが、少なくともヒトにおける子宮内膜症の発生リスクは、月経・妊娠・分娩暦・女性のライフスタイルなどで説明しうる部分が大きく、ダイオキシン類が其の発生を規定する強力な因子とは言い難い。」
つまり、子宮内膜症の原因の大半は、最近の女性のライフサイクルが変化し、初潮から出産までの期間が長くなっており、しかも出産の高齢化、初潮を迎える年齢の若年化が進むと、子宮内膜症を発生する可能性が強くなる。又、初産年齢の高齢化には有職婦人が増え、責任ある、或はストレスフルな仕事への就業など女性を巡る社会構造の変化自体が、ダイオキシンによる汚染以上に子宮内膜症の発生の因となっており、不規則な生活、ストレス、体重の増減など生活環境の変化によって、内分泌系は非常に変化しやすいのである。子宮内膜症の発症原因のうち、ダイオキシンの占める割合はせいぜい1〜2%あれば良いところであろう・・・と武谷氏は考えている。そして、
「今後ダイオキシンによるエストロゲンの作用の修飾機序などの解明や、広範且つプロスペクティブな臨床疫学研究を通じて、両者の関連の有無が明白となるであろうと。」
この様に,武谷東大教授はダイオキシンが内分泌系を乱すことによって、子宮内膜症を増加させているかのような報道に釘をさしている。勿論ダイオキシンが子宮内膜症と無関係と言うわけではないが、ホルモン異常に関連する疾患を何でも環境ホルモンのせいにする風潮に警鐘を鳴らしているのである。
(「ダイオキシン汚染列島・日本への警告」長山淳哉監修・ダイオキシン問題を考える会・Dネット編著より)
図1
A
: 左の図1は、1967年から5年おきに長崎大学医学部付属病院皮膚科外来での各年度の新患者総数に占めるアトピー性皮膚炎患者の割合をグラフにしたものです(「環境問題としてのアレルギー」伊藤幸治編著より)。その結果、アトピー性皮膚炎の発生率は20年間で7倍に増加していることが分かります。そしてこの増加の原因をダイオキシンに求めているのです。つまりこのようにアトピー性皮膚炎が増加したいるのは、其の原因であるダイオキシンが年々増え続けているからであると言うのがその理由です。しかしそれにはかつてわが国の経済成長が何時までも右肩上がりに続くと信じられていたように、母乳中、更には環境中のダイオキシンも又右肩上がりに増加していることが前提であり、又事実そうだと信じられていました。更にその前提を補強する事項として、この10年間にダイオキシンの原料となるプラスチック製品の増加もまた10倍と増えている事情も加わり、ダイオキシンの右肩上がりの増加は確実であると思われていました。
ところがかつての環境中ダイオキシン増加の主たる原因であった、農薬や除草剤の製造・使用が禁止されたことにより、1973・4年辺りをピークとして、環境中や母乳中のダイオキシンは漸次減少を始めていたことが、最近の調査で確かめられてきました。この事は、母乳中の有害物質の推移を示す図2(「環境ホルモンに挑む」日経BP社医療局環境ホルモン取材班より)でも裏付けられています。この大阪府公衆衛生研究所のデータは、この20年間に、母乳中のダイオキシン類量は半減している事を示しています。この成績により、先の図1が、ダイオキシンがアトピー性皮膚炎の原因だと主張するする根拠とはなり得ないことがお分かりでしょう。
図2
A : 次にアトピー性皮膚炎とダイオキシンの関係について語る場合にしばしば引用され、ダイオキシンがアトピー性皮膚炎の原因であるとする大きな根拠とされている余りにも有名な、そして専門家でさえもこのグラフから、母乳保育と人工乳保育によるアトピー性皮膚炎の発症率の差・・・母乳保育の方がアトピーを起こしやすい・・・と信じ込んでいるこのグラフについての疑問を考えてみます。
図3について
さて、恐らくダイオキシンの健康被害に関心を持つ皆さん達のうちで、この図3を知らない方はおられないでしょう。このグラフは、ダイオキシン問題を考える会が、厚生省の児童家庭局が平成4年度に発表した「アトピー性疾患実態調査報告書」をもとに、母乳保育と人工乳保育とのアトピー発症率をグラフにして比較作成したもので、このグラフを見た100人中100人が、”母乳の方がアトピーになりやすいと確信した”と言ういわくつきのものです。
例えば九大の長山助教授はその著書「母体汚染と胎児・乳児」(98年・10・20発行)のなかで、
「この図では次の二点に注目します。まず、生後1ヶ月以内に6〜7%の新生児がアトピーと診断されていることです。この事は胎児期に母体から免疫系への悪影響を受けている可能性を示唆しています。次に、母乳哺育児では保育期間が長くなるにつれて、アトピー性皮膚炎の発生率が高くなるのに、人工乳哺育児では、保育期間が長くなるにつれて発生率が低下する傾向にあると言う事です。」
私の感想と疑問
一方、0ヶ月児で6〜7%のアトピー児という数字などに疑問を抱きながらも、私がこのグラフから引き出しうるところは、次のようなものでした。
なり易いと科学的に言い切って良いのだろうか?統計的に有意差があると言えるのか。又、0ヶ月児に既にアトピー児はそのように多数発症し、存在しているのか。
母乳=人乳はヒトに対してアレルギーを起こしやすくするが、一方人工乳=牛の乳はヒトに対してもアトピーを防ぐ働きさえ有する事を意味するのか?
此れまで私は母乳育児の方が人工乳保育より、生理的にアレルギーを起こし難いと信じていました。人乳と牛乳の本質的差異つまり、蛋白質の差を考えれば、それは当たり前というか常識というものでしょう。しかしこの表を見た直後には、環境汚染対策に大きな後れを取ったわが国の場合、事態はそこまで来ているのかという思いさえ脳裏をかすめました。
この図作成に関わった高山氏の意見
しかし、先の子宮内膜症とダイオキシンの関係の項で子宮内膜症の原因として、ダイオキシンを積極的に其の原因として考え、また、アトピーの原因とも考えている、このグラフを作成した「ダイオキシン問題を考える会・Dネット」の元事務局長高山三平氏は、このグラフから積極的にダイオキシンをアトピー性皮膚炎の原因と考え、厚生省の対応を不誠実として次のように非難しておられます。(ダイオキシンの恐怖:PH出版より)
”「この統計調査を行った厚生省の対応には怒りを禁じ得ません。この統計を専門家が分析すれば、直ちに母乳保育によるアトピー性皮膚炎の発症率上昇が明らかになるにもかかわらず、厚生省はこの統計を分かりずらい数字の行列式として発表し、この統計の本当に意味するところを国民に伝えなかったのです。どうして厚生省はこの統計を国民に分かりやすい形で発表しなかったのでしょうか。
ダイオキシン汚染との関係に気がつかなかったとしても、少なくとも「日本全国レベルの厳密な調査の結果、100%母乳で育てる場合と、100%ミルクで育てる場合を比べると、アトピー性皮膚炎の発生率は、母乳の方が40%程度高くなり、しかも母乳保育期間が長くなればなるほど、発生率は高くなります」と発表すべきであったと思います。
そして願わくは、「厚生省としてはこの問題を深刻に受け止め、日本全国から様々な専門家を集め、外国からもエキスパートを呼び、徹底的な調査・分析・研究を行い、この原因を究明したいので、是非協力をお願いしたい。と発表して欲しかった。
それでこそ国民の健康を守る厚生省の役割ではないでしょうか。もしそうしておれば、アトピー性皮膚炎の原因や、ダイオキシン汚染の実態が、今よりも早く明らかになり、多くの子どもや其の両親がこの様につらい病気で長期間苦しまなくて済んだはずなのです」と。”
国際認定ラクテイションコンサルタント本郷寛子さんの疑問と行動
本郷寛子さんも又このグラフを見て素朴な疑問を抱いた一人です。生れた時から母乳児と人工乳児に、あんなに差があるように見えるのは何故だろう。そして、アトピーの診断は生れてすぐには出来ないのではないかと言う疑問です。
そして彼女はすぐ行動に移りました。本郷さんはこういう場合は、原典にあたるのが一番と、早速、厚生省の図書館に行き、原資料を調べました。その結果、重大な問題点に気づきました。それは先のグラフのもととなった資料は、乳児検診、一才半検診、3歳児検診でアトピー性皮膚炎と診断された子どもが、溯って何ヶ月から何ヶ月まで母乳だったかを聞いた質問の答えをもとに作図されたものであることが分かりました。感想1のような厳密な調査ではなかったのです。
厚生省アトピー性疾患実態調査の概要
そこで改めて厚生省児童家庭局の行った平成4年度アトピー性疾患実態調査の概要(アトピー性皮膚炎生活指導ハンドブック、1994年6月20日、南江堂及び、厚生省原資料の写し)より、その実態調査の主な点を紹介します。
保護者への聞き取り調査の中で、乳幼児栄養に関する設問は1問のみです。(乳児用)
問5 乳児期の栄養方法について母乳、人工乳、離乳食に分けて各々1か2に○をつけ、記入してください。
| 母乳 | 1 有 ( ___ヶ月〜___ヶ月) 、 2 無 |
| 人工乳 | 1 有 ( ___ヶ月〜___ヶ月) 、 2 無 |
| 離乳食 | 1 開始( ___ヶ月〜) 、 2 未開始 |
(出生月は0ヶ月、混合栄養の場合は、母乳と人工乳に分けて記入)
この聞き取り調査の結果を纏めたのが次の表です。
| 総数 | アトピー性皮膚炎有り | (%) | アトピー性皮膚炎無し | (%) | 不祥 | ||
| 0ヶ月 | 母乳 | 7、285 | 492 | 6.8 |
|
93.2 | 6 |
| 人工乳 | 1、155 |
|
6.1 |
|
93.8 | 2 | |
| 混合乳 | 5、321 |
|
6.5 |
|
93.4 | 7 | |
| 1ヶ月 | 母乳 | 6、674 |
|
7.1 |
|
92.8 | 6 |
| 人工乳 | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
このように表は続きます。この場合、0ヶ月の母乳哺育児7285名のうち、492名(6.8%)がアトピー性皮膚炎有りとなっていますが、この数字は0ヶ月でアトピー性皮膚炎と診断されたのではなく、この492名は、後の3回の乳幼児検診のいずれかを受診した際にアトピー性皮膚炎ありと診断されたと言う事なのです。この辺りの誤解が、この表をもとにして作成したグラフを見た殆どの人が、0ヶ月で早くも6%のアトピー性皮膚炎ありと・・・それは当然生じる誤解ではありますが・・・誤った判断なり知識植え付けられる結果となったのです。戦時中の大本営発表のように、余りにも大きな誤判断を多くの人に強いる事となったのです。
これでこのぐらふの誤解の構図がお分かりになったと思います。アトピー性皮膚炎があるかどうか、栄養法はどうかなどについて、0ヶ月から毎月の厳密な診察の末に診断され、記録されたのではなかったのです。3ヶ月から6ヶ月の乳児検診時、一才半、3才児の検診時に記憶をたどって質問・・・何時から何時まで母乳保育だったか・・・に答えた結果を纏めたものにすぎなかったのです。
疑問の氷解
これでそれまでの疑問の多くが氷解しました。そもそも0か月児の6〜7%がアトピーー児だなんて、医学の常識からは考えられない数字でした。私自身についてみれば毎月20から30人の0ヶ月の純粋に母乳で育った赤ちゃんを診察しますが、この時期にアトピー児なんか殆ど見たことがありません。見落としかと思って、二人の新生児専門医に6%と言う数字を申し上げたところアンビリーバブルと一笑に付されました。0か月児には到底考えられない数字なのです。この事からもこのグラフの作り方自体にも問題の有る事が分かります。
更にもっと大きな誤解が解けました。殆どの人がこのグラフを見て、0ヶ月ですでに母乳哺育児では6.8%のアトピー児が存在し、人工乳児には、それより少ないが6.1%のアトピー児が居ると解釈しています。しかし、これはおおきな誤りである事が既にお分かりの事と思います。0ヶ月に母乳で育てられていた赤ちゃんのうち、6.8%の赤ちゃんが後の乳幼児検診時にアトピー性皮膚炎ありと診断された事を意味しているのです。人工乳だった赤ちゃんの場合もそうです。6.1%の赤ちゃんが0ヶ月にではなく、後の検診時にアトピーありといわれた歴史を有するという事です。あのグラフ作成に際して、この辺りに重大な事実誤認があるままに作図されたようです。
”おまけに「ダイオキシンを考える会」作成のグラフは、縦軸を6,6.5,7,7.5,8と細かくとってあるので、まるで統計的有意差があるように見えますが、100%を軸に考えれば、差があるほどではありません”(浮世絵の春画的手法?excuse
me)。またこのように一部分を拡大して図にする場合には、そうしたとグラフに表現する約束事が有るのですが、無視されています。
又、本郷さんはいいます。”長く飲むほどアトピーが増えるかのように解釈する人もいます。一寸待ってください。アトピーの子が長く母乳を飲むのは、牛乳や人工乳が飲めないアレルギー児に母乳が必要だからで、当然のことなのです。高血圧と塩分の制限食の関係を調べ、高血圧の人の多くはそうでない人に比べて、塩分を控えているから「塩分を控えると高血圧になる}と言っているようなものです。”と
我が国の乳児栄養統計調査の欠陥
”しかも、先に紹介したように厚生省の設問では、入院中の人工乳の使用の有無は問うていません”。そうです。これも大きな問題なのです。この様に統計的に物事を考える場合、テーマによっては其の統計の価値を根底から否定しかねない大きな問題なのです。
わが国で此れまで母乳保育と人工乳保育の比較をする場合、常に曖昧にされているのが、出産後1週間の入院中の人工乳補足の有無です。WHO&UNICEFの10ヶ条方式に則ったBaby
Friendly Hospital のように、入院中に人工乳を全く使用しない産科施設は、わが国では依然極めてごく少数派であり、殆どの施設ではそれが正当な医療行為であるかのように、人工乳の投与が出産当日から、或は母乳が豊富に分泌されるようになるまで、ルチーンに行われています。しかも多くの母親が其の事実を知らないままに、この様な設問に際して、わが子は完全に母乳だけで育てているとして、母乳栄養の項に丸をしています。尤も其の事実を知っていても、調査時に母乳だけで育てていれば、特に注意書きの無い限り、多くの人が母乳栄養の欄に丸を記入するに違いありません。つまり、この様な統計に際して、わが国の母乳保育歴には上げ底の母乳保育、正確に言えば混合栄養児が多く含まれており、其の点を厳重にチェックした、完全な母乳保育を対象とした統計は皆無と言って良いのが現状です。従って先のグラフの場合も例外ではなく、このグラフの母乳保育児のなかには純粋な母乳栄養児は少数派で、人工乳補足歴を有する、実質的には混合栄養児と言える母乳栄養児が多くを占めている統計であり、既に産後の入院中に人工乳の牛乳蛋白質によって
感作された赤ちゃんも母乳保育児として対象に含めた統計、をもとにして作成されたグラフなのです。まして、このようなデータを元に母乳保育児の方がアトピーを起こしやすいなどと結論づける事は、極めて危険な非科学的な行為ではないでしょうか
母乳とアレルギー
「でも、先に母乳がアレルギーに良いと言いましたが、それは昔のことと主張する人がいます。そこで最近の海外の研究を紹介しましょう。(本郷)
以上の調査の「母乳」とは、「完全母乳」をさしていますが、日本では、アレルギーを持つ子供たちが、どこまで「完全母乳」だったかの調査はありません。
完全母乳哺乳児とアレルギー
本郷さんは「食物アレルギーを持つ親の会}に協力を頂き、産後の入院中における人工乳投与の有無を明確にした上で、アトピーと母乳育児に関する調査(1998)をしました。アンケート形式で、本会に属する227人の母親を対象に、第1子と第2子について、母乳育児関連の質問をしました。
尚、対象の227名のうち、第2子を有するのは157名である。そして、両親ともアレルギーなあるのは62.6%、片方の親のみは30.4%であり、9割以上の子どもがアレルギーの親を有しすと言う、アレルギー体質傾向の強い集団です。
幾つかの設問とその結果を紹介する。
:対象157名
| 第1子の方が強い | 第2子の方が強い | 第1・2子共に同じ位 | 無回答 |
| 41.4% | 49.1% | 7.0% | 2.5% |
第1子と第2子が母乳より摂取したダイオキシン量を比較すると、第1子保育時の母乳中ダイオキシン量の方が、第2子保育時より、遥かに高い事実が知られており、従って、ダイオキシンがアトピー性皮膚炎の原因として大きく関わっているならば、当然の事ながら第1子の方がアトピーが強くなければならない。しかし結果は表のごとくであり、第2子の方が強い方が多いと言う結果が得られています。
尚、平成4年度の厚生省の調査でも、第2子にアトピーと診断される子の多いことが判明しています。
本調査に協力して頂いた母子の場合、入院中、母乳、母乳と糖水だけだったのは32.6%に過ぎず、63%が既に入院中から人工乳が与えられていた。
次に、第2子のアレルギーの強弱と人工乳の補足の有無についてみると、
| 第2子の方がアレルギーが | 母乳のみ、母乳+糖水 | 母乳+人工乳 |
| 軽い | 66.2% | 24.6% |
| 重い | 37% | 49.4% |
(有意0.0004)
この表のように、入院中から人工乳が補足された場合、乳児のアレルギー傾向或は症状は強くなり、一方、入院中は人工乳を与えないで、母乳だけ、或は母乳に糖水を補足するだけで母乳育児に努めると、明らかにアレルギー症状が軽くて済むことが分かります。このことからも、入院中の人工乳補足の有無の記載の無いデータより作られた、母乳保育と人工乳保育のアトピー性皮膚炎の発症頻度を比較しようとした先の本テーマのグラフの信頼性や科学的価値が、どの程度のものかお分かりのことと思います。

乳児とアレルギーの仕組み
ここで、この辺りのアレルギー感作の仕組みを理解し易くするために、産後間も無い時期にミルクを与えた場合と、母乳・・・この際は初乳・・・を与えた場合の相違点について一寸紹介しましょう。
乳房は産後母乳分泌器官としての本来の機能に加えて、免疫物質の製造機能をも併せ持つようになります。そして,初乳中に含まれる200種類を越すといわれる生理的活性物質のうち、特に免疫グロブリンA(S−IgA)は腸管乳腺経路や気管乳腺経路を介して乳汁中に分泌されます。この免疫体は消化酵素に対して抵抗性が強く、消化・分解しないまま腸に達し、腸の粘膜の表面を、あたかも壁にペンキを塗るように広くひろがって覆い、細菌やウイルスの侵入を防ぎますが、同時に、アレルギーの原因となる異種蛋白の侵入をも防ぐ働きをし、アレルギー防止の役目をも果たします。これが出産直後からの母乳保育の方がアトピーを起こし難い理由の一つです。
一方、出産直後からミルクを与えることは、子どもがアレルギーになり易く、好ましくありません。この辺りの事情を、日本での花粉症の発見者である東京医科歯科大学の斎藤洋三助教授の意見を紹介します。(「超毒物ダイオキシン」より)
「何故、こんなにたくさんのアレルギー患者がいるのかと考えた場合、一つ指摘できる原因は
”人工乳と早期離乳”が挙げられます。何故人工乳と早期離乳が、アレルギー疾患を増やすのか。人工乳は牛の乳です。牛の乳は当然のことに異種蛋白です。赤ちゃんの消化管の機能が未だ十分に発達していない時に、牛の乳を与えるのです。異種蛋白である牛の乳は、消化管では消化されないまま素通りし、血液中に入ってしまい、そこで異物と感作され、赤ちゃんの免疫系を刺激してしまうのです。牛その他の動物の乳、或は豆乳に含まれる異種蛋白が、胃腸管の発達中に摂取されると、未消化で血液に浸透し、身体が感作し易くなるのです。この時期を過ぎると、胃腸が成熟し、アレルギーになる率はずっと少なくなります。」
そして更に、
「最近アレルギーの子どもが非常に増えている。厚生省の調査でも、国民の1/3は何らかのアレルギー症状を抱えているということだ。其の原因は、有害化学物質や花粉、ダニ、カビなど様々であるが、牛乳もその一つである。従って、アレルギー防止という観点から見れば、人工乳は相応しくないのである。
母乳は確かにダイオキシンを粉ミルクより多く含んでいるだろう。しかし、粉ミルクの原料となっている牛乳もまたダイオキシンに汚染されているのであり、それはアレルギー体質の子どもを作りやすいという問題がある。従って、栄養的な面や子どもの免疫力、アレルギーのことなどを総合的に考え合わせると、やはり母乳の方が優れていることになるだろう。」と。
では乳児期初期(生後3ヶ月以内)における人工乳の投与とアトピーの相関関係はどうでしょうか。
二人の兄弟姉妹のうち、第1子が強いと答えたうち、81.5%が人工乳を与えられており、又、同じ位と答えた人(11名)には全員の第1子に人工乳が与えられていました。
又、第2子の方が軽いと答えた人の場合には、第2子の33%しか人工乳は与えられていません。つまり、この場合、6割の赤ちゃんには3ヶ月以内に一度も人工乳が与えられていないと言うことが分かりました。
そして、第2子の方が強いアトピーを示した場合には、その第2子の3分の2に人工乳が与えられていました。
以上の出産直後の入院時、更に、退院後3ヶ月の間において、完全な母乳栄養児か人工乳補足児を区別した調査成績が示唆するところは、ダイオキシンがアトピー性皮膚炎の主たる原因とは考えられないこと、又、出生後間も無い時期における人工乳の投与は、アレルギーを起こす原因となることを明らかに示しています。

此れ迄人工乳中のダイオキシン量は母乳中に含まれる量のの10%位の低濃度であるから安全だと言われてきました。
ところが皆さん方の中には、本年の4月2日の新聞に、上のような図と共に、ゴミ焼却場近くの牧場の乳牛からとれた牛乳中から、高濃度のダイオキシンが検出されたと言う記事を御記憶の方も多いと思います。
帯広畜産大学の中野益男教授は、本年春の学会で、1997年4月と12月の2回に亘り、自治体の大規模ゴミ焼却場と隣接する民間の産廃焼却場を中心に、そこから半径40キロの地域に散在する10ヶ所の牧場の乳牛から採取した牛乳より、最高で4.6pg/g脂肪というダイオキシン類の値を検出したと発表しました。
この発表後、中野先生の研究室には、「何故牛乳の汚染だけを取り上げて公表したのか」とか脅迫まがいの電話が相次ぎ、差出人不明の手紙さえ出現したそうです。その間の状況を朝日新聞の「欧州のダイオキシン対策・・・見えない汚染を追うD日本との比較」より抜粋しますと、
” 6月26日の消印のある手紙が、西日本の環境調査会社に届いた。差出人は不明だ。この会社は中野教授に依嘱され、ゴミ焼却場近くの牧場で採れた牛乳のダイオキシン濃度を測定していた。その手紙には、
「安全な水準にある牛乳について世間を騒がせ、酪農乳業界に多大な被害を及ぼした。仮に牛乳の規制値が出来ても貴社にだけは文責を依頼しないと言う酪農乳業界の声があり、反社会的な行為とみなされている。これ以上の中野教授への支援は、貴社にマイナスとなる恐れがある。」”
政官界や経済界の腐敗や汚職が紙上を賑わしていますが、一部の人でしょうが、酪農乳業界も、いや日本人もここまで堕落したのかと情けなくなります。HIV問題などで、多くの犠牲の上に私たちは幾多の貴重な経験をしました。しかし、相も変わらぬ同じ発想の繰り返し。自分さえよければ他人の不幸など・・・。
さて、先の図の中で最も高い汚染値は大体0.2pg/mlですが、これは4.6pg/g乳脂肪に相当します。
新聞にはこの値は、ドイツやオランダの廃棄基準(それぞれ5pg、6pg、但しコプラナーPCBを含む)より低く、危険性なほどの値ではないと記載してありましたが、少しでもダイオキシン問題に関心と知識のある人であれば、この汚染度は明らかにドイツやオランダの廃棄基準を上回る値であり、かの国であれば廃棄処分に値する汚染濃度であることがお分かりのことと思います。何故なら、中野教授が測定されたのは、ダイオキシンとダイオフランの2種のみです。もしここに、コプラナーPCB値をも測定して、さきの4.6pg/gに加えるならば、明らかにドイツやオランダの規制値を上回ってしまいます。この事は先日の母乳育児シンポジウムの際、直接先生にお尋ねし、確認しました。しかもそのように汚染された牛乳は日本では廃棄されないで、他の低い汚染度の牛乳と混合して出荷されているのです。中央酪農会議は、「日本の牛乳は一般的に市町村単位の農協が酪農家から集めてブレンドし、メーカー工場に運ぶ」(朝日新聞4月2日付)と、混ぜて薄めているから大丈夫と言うわけです。
そしてこの4.6pg/gと言う汚染濃度はわが国のヒトの母乳の平均的濃度と比較しますと、その1/3の濃度であり、牛乳瓶1本(200ml)に40pg含まれていることを意味します。しかも牛乳は子どもの愛飲する飲み物です。
.しかもこの調査成績は全国を6ブロックに分けて調べたうちの、比較的きれいだった二ブロックについてであり、つまり、今回発表された地域は、日本では比較的によい環境に恵まれた地域のデータなのである。もし、本州の都会に近い地域の牧場の調査であれば、どのような結果が出るだろうかと心配していたら、実際にこの調査と並行して単発で調べた本州都市近郊の牛乳からは、実際に非常に高いダイオキシンの値が出たとのことです。
「この様に、現在牛乳中のダイオキシン汚染度については、正確な全国レベルの調査報告はなく、実態は霧の中ですが、ダイオキシン汚染は母乳だけではなく、この牛乳もまた、程度の差はあれ、同様に汚染されていることは間違い無い事実です。
但し、人工乳の場合、牛乳と異なる点はその脂肪が植物油に置換されている事です。ダイオキシンは脂肪中に含まれているので、人工乳の場合はごく僅かしか含有してません。念のため」
妊娠初期はさまざまな化学物質に依って影響を受けやすく、最も奇形の生じ易いじきとされています。特にサリドマイドの教訓により、妊娠4週から7週末までが胎児の中枢神経、心臓、消化器、四肢などの重要な臓器が発生・分化する時期で、催奇形という点では胎児が最も敏感な時期だと特定されており、引き続き15週末まで影響され得るといわれます。
ダイオキシンの催奇形性については、母乳中のダイオキシンと同様に赤ちゃんへの影響が心配されています。
つまりダイオキシン類は母親の胎内にいるときは臍帯を通じて赤ちゃんに移行し、奇形を起こす可能性が懸念されています。しかしこのたびの厚生省の調査では、ダイオキシンの胎盤経由、臍帯を通じて赤ちゃんに移行する量は極めて微量であり、赤ちゃんは母胎を通じて守られている事を示すデータとして注目されますが、しかし、胎児が最も影響を受けやすい妊娠初期には胎盤は未だ出来ておらず、肝心のこの時期の胎児(胎芽)への移行の実態については不明です。
臍帯血などのダイオキシン類に関する研究班は、東京都内の病院で、20人の妊産婦に協力してもらい、胎盤・臍帯血・出産後5日目の母乳のダイオキシン類の濃度を測定しました。
ダイオキシン類の平均濃度は1グラム当たりで、胎盤が0.44pg、母乳が0.46pgであったのに対して臍帯血は0.0092pgと二桁違いに低い値が得られました。この事は、母胎血が胎盤から臍帯を通じて胎児移行する過程で、胎盤がダイオキシンの移行をブロックして、移行を妨げておる事を意味します。
過去の研究で報告されている大人の血液中のダイオキシン類の濃度と比べても、臍帯血中の濃度は七分の一程度であった。なお、研究班の多田裕教授は「脂肪一グラム当たりのデータがないので、、更に慎重に検討するようがある」と。