日本の南方、北回帰線上に位置し、3000ｍ峰が延々と連なる雄大な山岳地帯にも恵まれた台湾。この台湾が、日本からもっとも近い、南天の星々の好観測地であることは、本誌でも何度か紹介してきた。
台湾にも、活発に活動している天文アマチュアがいる。中でも本誌などによく登場するのが、台南市天文協会の林 啓生さん。その林さんから、台湾でのスターウォッチング・レポートが届いた。
台湾の天文愛好者がよく訪れるのは、山岳部にある「梨山・合歓山」と「阿里山・玉山国家公園」。いずれも絶好の観測地であると同時に、風光明媚な有名な観光地でもあります。
● 阿里山・玉山国家公園
阿里山は海抜2000ｍ以上で、交通・宿泊も便利。観光名所も数多くあります。
阿里山には、ご来光の名所・祝山など、観測に適した場所がたくさんありますが、私たちがよく行くのは、阿里山から玉山国家公園へ通じる国道18号線沿線です。77km地点（嘉義市からの距離）付近に開けた場所があり、そこに立つ木の姿がうら若き女性の姿に似ていることから「仙女坪」（アンドロメダ平）、それにもう１カ所、76.8ｋｍ地点から少し下った所にある「新仙女坪」、この２カ所です。いずれも、南側の空が非常によく開けた、天体観測に絶好の地点ですが、近くに宿舎がなく、その点は不便です。
国道18号線をさらに進むと、玉山国立公園へ到達します。この付近は、台湾の最高峰・玉山（3952m）を中心とする山岳地帯で、「東埔山荘」という宿舎もあります。ただし、山岳地帯のため、視界はあまり開けていません。
阿里山・玉山へはバスもありますが、レンタカーを運転しいくのがよいと思います。
● 梨山・合歓山
梨山地区はフルーツの産地として有名で、観光地としても知られています。私は梨山へ行く道路の起点・台中市の逢甲大学に在学し、また後に梨山地区の天池という所で半年ほど過ごしたこともあって、この付近で1000枚以上の天体写真を撮影、超新星1989B の観測なども行いました。
天池は、梨山の南方にある標高2600mの山頂、車で行けますが、宿舎はありません。視界は開けていて、南天の観測に最高なのですが、雲が出やすく、なかなか快晴に恵まれないのが欠点です。
天池に近い福寿山農場には広場があり、南以外は視界も良好です。ここでは農場の宿舎に泊まることができ、グループ観測に適しています。
梨山の南東には、台湾で唯一スキーができる合歓山（3416m）を中心とした合歓山地区があります。この付近の観測地は、標高2960mの広々とした駐車場「小風口停車場」、台湾の道路の最高地点・標高3275mの「武嶺」、そこから1kmほど南方の視界がよい「昆陽」などがあります。
梨山までは、台中市からバスが頻繁にありますが、それより奥へは、車でないと行きづらいでしょう。
これまでご紹介した観測地は、すべて標高2000m以上にあり、雲の上に出るので、高山特有の清澄な空に星を見ることができます。
季節ごとの山岳地帯の天候の特徴は、次のようなものです。
夏は午後に雲と霧が多く、雨が降りやすくなりますが、雨上がりには素晴らしい星空が広がります。晴天率は、梨山方面の方が阿里山方面より多少高く、中でも合歓山地区は良いようです。
秋はよい天気に恵まれることが多く、安定しています。
冬は、中国大陸の寒気団のため、あまり天気はよくありませんが、夏とは逆に、阿里山方面の方が梨山方面より多少晴天率が高くなります。
春は霧が多く、晴天率は悪くなります。そして、毎年5月から6月中旬までは、梅雨の季節。雨がよく降ります。
全般に、台湾は日本同様海洋性気候ですが、天気の変化は早く、また、平地は晴天でも山地は降雨というように、地域による天候の変化も大きいのが特徴です。
下右：合歓山地区は、三千メートル級の山々が連なる間を道路が貫いている。
台湾でも指折りの、天体観測の好適地といえるだろう
春 冬の大三角形を東に伸ばした方向、南の地平線上に”春の銀河”が横たわっています。この中には、沢山の星雲・星団が見られます。まず、全天一の散開星団・ＮＧＣ3372（ηカリーナ）、その前後に随伴するＮＧＣ3314とＮＧＣ3532等‥‥‥。東天を見れば、あの南十字星が光っています。双眼鏡や写真を使えば、”宝石箱星団”やコールサックも捉えることができるでしょう。やがて、ω星団をはじめとするケンタウルス座の星々が、次々と昇ってきます。
夏 激しい夕立のあとは空気が清浄になり、夏の銀河が一段とみごとです。はくちょう座からさそり座にかけての”銀河の裂け目”がはっきりと見え、いて座付近の銀河はさらに明るく輝いて、初めて見る人は雲と間違えてしまいます。頭をぐるりとめぐらすと、数々の星雲・星団が光芒を放っているのです。望遠鏡で観測すれば、さらに豊かな星空に出会えるでしょう。阿里山の「仙女坪」では、下界の灯火も同時に見ることもでき、その様子か一幅の絵のようです。
秋 高山では木々が色づき、大気も澄んできます。太陽が沈むと、ファーマルハウトが南の空に高くかかり、白い光を放ちます。その下には、つる座とほうおう座、東に目を移せばくじら座が、ＮＧＣ253・288・55・300・246といった星雲・星団は高度も高く、観望や撮影の好対象となります。しばらくすると、エリダヌス座のアケルナルが昇ってきて、南の地平線に孤高の輝きを見せます。北の空にはカシオペアとペルセウス、頭上にはアンドロメダとペガススがかかり、エチオピア王家の物語を見ているようです。Ｍ31と33も明るく輝き、秋の夜空では忘れられないものです。
冬 年末になると、高山に雪が積りはじめます。冬の銀河のまわりにオリオン座、おうし座、ぎょしゃ座、おおいぬ座などが見慣れた姿を見せ、我々を招きますが、防寒には十分な注意が必要です。たくさんの１等星や明るい星雲・星団を観賞した後は、南のとも座・りゅうこつ座に目を移せば、ＮＧＣ2477・24・51などの散開星団を多数目にすることができます。また、おおいぬ座の下には、全天第2の輝星「南極仙翁」（南極老人星＝カノープス）が高々と現われ、星を見る人に幸福をもたらします。
みなさんも、台湾の星空を訪ねていただければ、きっと幸福になるでしょう。心から歓迎したします。
下：亜熱帯圏に属す台湾でも、山岳地帯では式の変化がはっきりしている。
高山での秋の紅葉は、ことに美しい
リンク：
望遠鏡ですばらしい宇宙を探索：大連理工大学で林啓生さんが天体写真展（大連日報2003.10.22.、中国語）
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I translated from Chinese to Japanese the article about Taiwan's night skies written by LIN Qisheng of Tainan Astronomical Association.
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