中国のキリスト教

大黒山

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以下は、Amity-China Mailing Listで議論された内容です:

2001.08.06.

みなさん、こんにちは。こちらは中国・台湾のキリスト教に関心がある方々が自由に発言・質問ができるmailing listです。

最近、いろいろな方々の参加登録をしましたので、ここで簡単に中国のキリスト教について
 1.現状
 2.聖書と聖歌/賛美歌集
 3.歴史
に分けて、簡単にお話ししたいと思います。私の見方なので、追加・反論・質問などありましたら、ぜひご自由に発言してください。

まずその前に、台湾のキリスト教について。台湾は自由主義の地域ですから、日本や米国などのキリスト教の現状とあまり変りがないと思います。ただし、政府の強権発動がいろいろな面でこれまであったし、プロテスタントでは長老派(長老会)が圧倒的な多数を占めていて、中国独自の教派(真耶蘇会、小群など)もあり、カトリックもそれなりに多く、キリスト教人口は10パーセントくらいでしょうか。

中国では5大宗教である道教、仏教、イスラム教、基督教(といえばプロテスタント)、天主教(といえばカトリック)のみが、公開の礼拝所での礼拝をゆるされていて、国務院宗教局が管理しています。新しい、末日聖徒の会、法輪功などを、特に海外からの指導で作ろうとすれば、それは中国の法律に違反していて、徹底的に弾圧されます。

一般の方々は、基督教と天主教は違う宗教と思っていて、日本のようにキリスト教の中にプロテスタントとカトリックがあるとは感じていないようです。これは、台湾、韓国、ベトナムなどでも、そうなのだそうです。

中国キリスト教信者の現状は、プロテスタントが1500万人、カトリックは300万人といわれていて、全人口が13億人とすれば、日本のクリスチャン人口の1パーセントを越えるようになりました。プロテスタントが大幅に増えていて、カトリックは漸増ということだと思います。

文化大革命(1996?1977)の大宗教迫害の経験あと、1979/80年に教会での礼拝が復活し、まもなくプロテスタント諸教派は自分の意思で「中国基督教協会」(C.C.C. = China Christian Council)として合同したということになっていて、教派がないpost-denominationalな教会を目指しています。

合同の主柱になったのが、1950年代にYMCA出身の呉耀宗(Y.T. Wu, Wu Yaozong)などが主張した「三自愛国運動」(The Three-Self Patriotic Movement)で、自分で管理し(自治)、自分で資金を集め(自養)、自分で宣教する(自伝)をやっています。これは必ずしも戦後に共産党の統一戦線の一環として始まったことでなく、1920年代に同様なことを目指す「中国基督教会」(Church of Christ in China)が南京近辺では、すでに全体の25パーセントを占めていたという歴史の延長ともいえると思います。なぜ中国が三自愛国主義を主張するかは、3.歴史の部分でもう1回触れたいと思います。

いまの中国の教会堂には、中国基督教協会と三自愛国運動委員会のカンバンがかかっています。愛国委員会が全体的な統一戦線上の政策を決めて監視し、基督教協会が細則を決めて監視しているのでしょう。この2つの組織を「両会」(リャンホェイ)といって、様々な指示が両会の合意の上で出されています。教会の全国的組織は、中国の省、市などの政治組織と一致していて、海外におけるような教区(Diocese)といった組織はありません。(ただし、天主教会は教区という組織を残している。)

中国基督協会はまた、1985年に「愛徳基金会」(The Amity Foundation)という慈善団体
http://www.super.net.hk/~amityhk/
を作り、これには海外からの援助を受け入れています。中国の貧しい省、とくに内陸部の省で、無医村に衛生員を育て、不登校児童を援助し、みなさんご存知の英語・日本語・ドイツ語教師派遣も組織していて、さまざま な層から大変いい評価を得ています。この15周年行事に私も日本から1人
http://www.threeweb.ad.jp/logos/seikokai/china2000.html
出席して、中国西方の甘粛省の無医村などを訪ねました。日本教師については、今年も9月から3人のクリスチャンの方々
http://www.threeweb.ad.jp/logos/amity/
が日本キリスト教協議会
http://www.jca.apc.org/~ncc-j/
と愛徳基金会を通して、続けられます。

なお、これまで中国基督教協会と三自愛国運動委員会の会長を、戦後上海で聖公会主教の按手を受けた丁光訓(K.H. Ting, Ding Guangxun)主教が永年勤めていましたが、最近中国基督教協会・愛徳基金会は韓文藻(Han Wenzao)さん(エンジニア出身)が会長を勤め、丁光訓さんは金陵神学院の学長のみになる世代交代も進んでいます。私は、去年お2人にお会いしています。

カトリックも、中国では非常に盛んであると思います。
http://www.threeweb.ad.jp/logos/seikokai/china1998.html
ただし、ローマのパパさんのもとでほぼ1枚岩の組織なので、いまの中国で1番苦しんでいるのではないでしょうか。また、プロテスタントとカトリックの仲が悪く(日本と比べて)、日本人のプロテスタント者が中国でカトリック教会へ行ってキリストの教会は1つというのを身をもって示すのも、大変大切に思っています。

これ以外に、私は直接見聞きした訳ではありませんが、愛国会の考えとは相入れない人々の地下教会が新聞・雑誌などで伝えられ、特に福建省など南部で大きな教会をもっていて、そこで説教をした方とか、聖餐式をやられた方とかの報告もあり、これをときどき軍隊が爆破するというような事件も伝えられています。

という訳で、確かに我々の自由主義の国のように宗教的自由はありませんが、ある制限下での信仰の自由はあり、クリスチャン人口が増えているというのが、現状と思います。愛国会の人と話していると、共産党員のモラルが汚職などで地に落ちた現状で、キリスト教による精神運動も多少いいかな、という考えがチラチラと見え隠れしています。

それから、未成年者への宗教教育は禁止です。ですから幼稚園から大学まで、キリスト教教育はご法度。(ただし、大学でキリス教を含む宗教の研究はOKになった。)子供はみっちりマルクス主義の唯物論を習い、それでも大人になってクリスチャンになるのはしょうがないということでしょう。ですから、教会では子供は見かけないし、幼児洗礼も禁止です。

現代のマスコミは、アメリカの反共主義の人々に迎合して、中国での地下教会の弾圧などをことさら大きく取り上げ(そうしないとニュースにならない)、海外のクリスチャンの中国キリスト教に対する恐怖心をあおっている感もあり、これは中国のキリスト教の現状を正しく伝えてないと思います。

ですから、日本人が中国に旅して、または住んでいて、中国の教会に礼拝に参加するのは、地下教会でない限り、自由です。私も、個人で、グループで何回も参加し、礼拝後比較的自由に信徒のみなさんと話し合いました。

みなさんぜひ中国への旅行の節は、中国の教会
http://www.threeweb.ad.jp/logos/china/church.html
へ出席することをぜひおすすめします。教会の住所は、最近は電話帳に載っているし、またこのページの参考資料の本に書いてあります。中国語は分らなくても、まぁフランスの礼拝に出席しているという感じでいいと思います。

2001.08.08.

みなさん、ニーハオ。

いま、簡単に中国のキリスト教について
 1.現状
 2.聖書と賛美歌集/聖歌
 3.歴史
 4.我々は何をすべきか
に分けてお話ししています。(4.は、cc:で送った大学の物理学の恩師から > あなたの報告の第二、第三を楽しみにしています。というコメントをきょういただき、図に乗って追加しました。)すべて私個人の見方なので、追加・反論・質問などありましたら、ぜひご自由に発言してください。

きょうは、聖書と賛美歌/聖歌集についてですが、はじめに中国の言葉について見てみましょう。中国は北のモンゴル族、朝鮮族から始まって南のタイ・ベトナム人に近い民族をかかえる多民族国家ですが、大多数(95パーセントでしょうか)は漢族です。漢族はおおむね中国語を話していますが、5大方言があるといわれ(北京・上海・福建・広東・客家方言)
http://www.threeweb.ad.jp/logos/chinese.html
7大方言という人もあり(湖南・江西方言を追加)、その中でもさらに細分化していていて、大方言間では話は通じません。注:客家は古代に中原(黄河中・下流)に住んでいたのが、徐々に追われて、いまは中国南部の山岳地帯や台湾、ペナン島などに住み、商売上手で、教育熱心で、その面では中国のユダヤ人とも言われ、有名人を多く排出しています。

それで、毛沢東も蒋介石も言語政策については同じことをやり、学校は幼稚園から大学まで、新聞・ラジオ・テレビなどのマスコミ、官庁や大企業では、すべて北京語を使用させました。北京語以外は、書き言葉としては未発達なので、当然かも知れません。北京語は、ほぼ長江(揚子江)以北では日常も使われ、その他の地区ではその土地の方言を使っていて学校・会社へ行くと北京語に切り替えます。

中国語(北京語)は漢字で書かれる訳ですが、台湾と香港では昔懐かしい旧漢字が使われ、大陸では戦後簡略した文字が使われていて、それぞれ繁体字(Traditional Chinese)、簡体字(Simplified Chinese)と普通呼んでいます。パソコンではそれぞれ、ほぼ1万2千文字、7千文字、入力方法などは
http://www.justsystem.co.jp/ark/review/04.html
を読んでください。

中国のプロテスタントで、いま1番多く使われている聖書は、「和合本」(Chinese Union Version、1912刊だったと思う)です。魯迅が「阿Q正伝」などで白話体(口語体)を進めたのが1930年代ですから、これは当然文語体で、「1番多く使われている」といいましたが、これ以外に私は見たことがありません。(確かに、お茶の水のOCCビルのCLC Booksへ行くと「現代翻訳本」みたいな訳も、ありますね。)

それで、聖書がほぼ統一されているためか、「主祷文」(主の祈り)もマタイ6章に出てくるそのままで統一されていて、日本に比べて大変うらやましいと思いました。(日本も、文語聖書のころはそうだったのでしょうか。)使徒信条/信経についても統一されているようで、ニケア信条/信経については中国語では聞いたことがないので、あまり一般的でないのでしょう。(日本聖公会では、主日礼拝にニケア信経、洗礼の時に使徒信経を使います。)

中国では、聖書を南京の南郊外にある「愛徳印刷公司」(Amity Printing Co., Ltd.)で多量に印刷しています。これは、5年ほど前に世界キリスト教協議会(World Council of Churches)の協力のもとに、印刷機もヨーロッパから輸入し、薄い上質紙紙も輸入して、建設されたもので、私も去年4月に見てきました。(いまは、紙は国産だといってました。)何と、ISO−9000(世界的な品質管理基準)の認証も取っていました!

それで、私は日本やその他の国々から秘密に中国へ聖書を送る運動は不要と思っているし、他の点からもそういうさそいはお断りするように薦めています。ただ、中国の聖書の流通はうまくいってなくて、教会の売店では自由に買えるが、一般書店は政府系の新華書店が幅をきかしていて、聖書が置いてないです。(仏教の大蔵教や聖書物語、キリスト教史などの本は置いてある。)また、日本の国際ギデオン協会などもないので、無料で聖書を一般大衆が手に入れるのは不可能です。

中国基督教協会の賛美詩(賛美歌/聖歌)は、1983年に内外の賛美歌を入れて「賛美詩・新編」として出版され、これがどこでも使われています。中国では、日本の明治・大正時代には広く使われていた楽譜を数字で表す賛美歌集も多いが、五線譜版も同時に発行されています。

この中にある賛美歌の1つ「暗い冬が終わり、春になり」という内容の歌が(すみません、この本を友人に貸していて、番号が分りません)、日本で最近改定される賛美歌集にも入ってきています。とてもいい歌です。

それから、私はこの本の中国語・英語版もあり、去年瀋陽で入手しました。英文タイトルは、「The New Hymnal, English-Chinese Bilingual」です。また、愛徳印刷公司では非常に興味ある小型電子機器を見ました。オルガンやピアノがない小規模な衆会点(Meeting Points)用に、賛美歌の番号を入れるとその曲を演奏してくれるものです。

台湾の状況ですが、台湾は台湾語(先ほど述べた福建語の南部方言の変形)を話す方々(内省人)が7割、戦後蒋介石と一緒に大陸から来た方々(外省人)が2割、その他客家語を話す方々、山地族が1割(彼らも内省人)くらいの人口構成でしょうか。これまでマスコミでは北京語一辺倒でしたが、徐々に開放されているようで、いまは台湾語のテレビ局もあるし、おととし中華航空では北京語・台湾語・英語・日本語でアナウンスしていたし、台北の逓運(地下鉄/高架鉄道)に乗ったら、北京語・台湾語・英語・客家語でアナウンスしていました。

台湾聖公会
http://www.threeweb.ad.jp/logos/seikokai/taiwan.html
の礼拝は、しばらく前までは北京語一辺倒でしたが、10年くらい前から中部・南部を中心に台語(台湾語)の会衆・教会が出てきています。(戦前に日本聖公会が日本語を中心にした台湾聖公会を作りましたが、主に日本人が中心で、戦後日本人が台湾を去ると同時に、教会は長老会の所属になっている。)去年、私が夏休みに日本語をボランティアで教えた聖大摩提(聖テモテ)堂
http://ecusa.anglican.org/taiwan/sttimothy/
も台語の教会でした。聖書は台湾語、賛美詩も台湾語でした。台湾語は、戦前のローマ字から、漢字になっています。最大多数派の長老会は、もともと戦前から台湾語でしたから、英国(スコットランド)とカナダの長老会の営々と前世紀から聖書を台湾語に訳していった年季は、筋金入りと言えると思います。

中国のカトリックの聖書、聖歌集については、よく分っていません。1998年にカトリック教会へ巡礼したときには、様々なものを渡されました。どなたか、簡潔でいいですから教えていただけると、ありがたいです。

(続く...)

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This has been discussed in the Amity-China Mailing List.

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Prepared by Yoshi MIKAMI on December 8, 2001. Last update: Dec. 8, 2001.